競走馬の性別は3種類?オス、メス、そして騙馬(センバ)の違いを解説
競走馬は生き物なので、人間のように性別があります。
男の馬を牡馬(ぼば)、女の馬は牝馬(ひんば)、そして、去勢された牡馬は騙馬(せんば)といい、3種類の性別が存在します。
人間の陸上競走は性別をわけて競技が行われるのが一般的ですが、競馬では基本的に牡馬も牝馬も騙馬も、性別問わずレースを行います。
ここでは性別による違いや特徴を紹介した上で、性別におけるレースの有利不利を解説していきます。
牡馬とは
オス馬です。
人間でいう男性で、「おとこうま」と呼ぶこともあります。
牝馬との見分ける方法は、人間と同じで男性器の有無で判断できます。
馬の後ろ脚の間から股が見えたら牡馬です。
牡馬は一部のレースに出られない
牡馬は一部のレースには出走できません。
例えば、桜花賞やオークス、エリザベス女王杯といったレースは出走条件が「牝馬限定」と決められているので、牡馬は出走できないです。
ところで、皐月賞やダービーといった格式のあるG1レースでは出走馬がすべて牡馬であることが多いです。
これらのレースは牡馬しかでられないわけではありませんが、皐月賞やダービーといったクラシックレースの前後には、牝馬しか出走できない桜花賞やオークスが開催されます。
多くの牝馬は牝馬限定の桜花賞やオークスを選択するため、皐月賞やダービーは牡馬のみで開催されるケースが多いのです。
牝馬とは
メス馬で、人間でいう女性にあたります。
「おんなうま」と呼ぶこともあります。
見分け方は牡馬と同じです。
股を見て何もなければ牝馬です。
牝馬もダービーを目指すことができる
競馬初心者にはあまり知られていませんが、牝馬は牡馬だらけのダービーに出走できます。
それどころか、皐月賞も菊花賞、そして2歳限定戦の朝日杯FSにも出走できます。
これらのレースは開催前後に牝馬限定のG1レースがあるので、積極的に牡馬が集まる皐月賞やダービーを選択する馬は基本的にいません。
しかし、牡馬相手に結果を残せば馬の価値が高まるので、あえて牡馬が集まるG1に挑むケースもあります。
ちなみに、牡馬混合G1で結果を残した代表的な馬はウオッカです。
牝馬としては実に64年ぶりにダービーを制しました。
それ以外にも、菊花賞で5着に入選したメロディーレーンや、同じく菊花賞で3着に入選したディヴァインラヴ、朝日杯FSで3着のグランアレグリアに2017年の皐月賞で1番人気に支持されたファンディーナがいます。
騙馬とは
去勢された牡馬です。
外観だけ見たら男性器がないので牝馬と違いはありませんが、もともとが牡馬で馬名登録されているので、名前と照らし合わせれば騙馬であることがわかります。
騙馬のメリット
騙馬にするメリットはいくつかあります。
一つ目は気性難をなくすことです。
競走馬も人間と同じでさまざまな個性がありますが、なかには手が付けられないほど気性が荒い馬もいます。
去勢手術を行うと、気性難が収まる傾向があります。
気性が落ち着くと、稽古に集中し、トレーニング効果を高めることができます。
また、レースに挑んでも集中力を高めることができるので、能力を発揮しやすいです。
もう一つのメリットは、怪我の可能性を減らせます。
去勢された馬には女性ホルモンが分泌され、身体が柔らかくなります。
人間でもトレーニングを行う前はストレッチや軽い運動を行うことで身体をほぐします。
なぜなら、身体が柔らかい方が怪我する確率を抑えられるからです。
競走馬も身体が柔らかい方が怪我するリスクを抑えられます。
一般的に能力が高いにもかかわらず、気性難のためにレースで力を発揮できない馬に対して去勢を行いますが、去勢することで怪我のリスクも抑えることができるのです。
騙馬のデメリット
騙馬になるデメリットをいくつか紹介します。
ひとつめは、気性がおとなしくなりすぎて、競争心を失うリスクです。
競走馬は直線で多数の馬としのぎつつ、少しでも先着しようと、闘争心を発揮します。
ところが、去勢で闘争心を失うと、直線でも粘り強さを発揮しなくなる可能性があります。
もちろん、すべての騙馬が競争心を失うわけではありませんが、去勢を行うことで勝負強さを失う可能性があるのです。
ふたつめは、種牡馬になれないことでしょう。
男性器を失っているので当然ですが、種牡馬入りできません。
みっつめは、騙馬はクラシックレースに出走できないことです。
皐月賞やダービーなどのクラシックレースは出走条件が「サラ系3歳牡・牝」となっているので、騙馬は出走できません。
もともとクラシックレースはより強い子孫を残すためにレースというかたちで選定するものなので、生殖能力のない騙馬は出走できないのです。
騙馬のG1馬
騙馬でも活躍した馬は何頭もいますが、過去に活躍した騙馬を紹介します。
レガシーワールド
騙馬でも走ることを世に証明した馬です。
国内馬としては史上初となる騙馬のG1馬となりました。
高いポテンシャルは秘めていたものの、気性難のためにトレーニングも行えず、ゲート入りは下手、そしてスタートはもっと下手だったので、去勢手術を行いました。
主な勝ち鞍はジャパンカップとセントライト記念です。
セントライト記念ではステイヤーのライスシャワーに先着し、ジャパンカップでは海外馬を振り切って優勝しました。
勝ち星こそつかめていないものの有馬記念でも2着入選していて、第一線で活躍していました。
ノンコノユメ
ノンコノユメは2018年のフェブラリーステークスを制しています。
現在は中央登録こそ抹消されましたが、地方大井に移籍しました。
2021年、ノンコノユメは9歳ですが、この年の帝王賞では2着に入選して、現在も年齢を感じさせない走りを見せています。
カレンミロティック
ハーツクライ産駒のカレンミロティックは4歳で去勢手術を行いました。
去勢前も安定していましたが、去勢してからはさらに落ち着いた走りを見せています。
穴馬としても有名で、2014年のゴールドシップが制した宝塚記念では9番人気ながら2着に入選しています。
さらに、2015年の天皇賞(春)も10番人気ながら、ゴールドシップの3着に入選し、翌年の天皇賞(春)は13番人気に支持を落としながらも最後の最後までキタサンブラックと競り合い、僅差の2着に入選しました。
香港馬に騙馬が多い理由
香港のレースでもっとも認知度が高いのは12月の半ば、ちょうど国内では阪神JFが開催される日に開催される香港国際競走です。
香港カップや香港マイルといったG1レースが一日に4レース開催されます。
日本でも香港の馬券が買えるので、馬券を購入された方は出馬表を見たと思います。
そこで、どうして香港の馬は騙馬が多いのか、疑問に思った方もいるかもしれません。
その答えはシンプルで、単純に、競走馬を育成する牧場が香港に存在しないからです。
そのため、ほとんどの馬は去勢手術を行い、レース仕様にしています。
牡馬と牝馬はどちらが強い?
人間でも女性よりも男性の方が身体能力は勝りますが、それは競走馬にも当てはまります。
日本の競馬は性別によって牝馬に斤量面での優遇されています。
基本的に牝馬は牡馬よりも2キロ、斤量の恩恵を受けられます。
しかしながら、牡牝混合レースのほとんどは牡馬が制していることから、競走馬においても牡馬のほうが身体能力は優れています。
牡馬に揉まれて勝つ牝馬はほんもの
牡馬混合戦で何度もレースを勝つ牝馬は、斤量の恩恵以上の強さを秘めています。
G1タイトルを9つ手にし、そのうち5つのタイトルが牡馬混合戦だったアーモンドアイや、三冠馬対決となったジャパンカップにて、オルフェーヴルとのマッチレースを制したジェンティルドンナは相当強い馬なのです。
引退後、有利なのは牝馬
引退後の競走馬は、牡馬なら種牡馬入り、牝馬なら繁殖入りするのが一番理想的な引退後の過ごし方です。
さて、牡馬と牝馬のどちらが引退後の余生を送りやすいかというと、牝馬に分があります。
牡馬は現役時代に活躍している馬ほど種牡馬入りしやすいです。
また、生まれた産駒の活躍次第で長く種牡馬生活を送れます。
現役時代の活躍というと、最低でもG1タイトルを1勝は手にしておきたいです。
基本的にG1タイトルをつかめる馬は現役馬の絶対数から見ると圧倒的に少ないので、生半可なことではありません。
それだけではなく、どんなに現役時代に活躍していても産駒に恵まれなければ、種牡馬を引退せざるを得ません。
なぜなら、毎年種牡馬入りする馬が必ずいるので、種牡馬の枠が限られているからです。
しかも、種牡馬は一年に100頭以上の牝馬と交配できるので、産駒数の数だけ成功する可能性も、失敗する可能性もあります。
種牡馬入りして数年で種牡馬の評価がおおむね分かってしまうのです。
しかし、牝馬は一年に一度しか仔が生めないので、例えば初仔がレースで走らなくても、翌年以降に大物が生まれる可能性があります。
また、種牡馬次第で強い仔を生む可能性もあるので、ある種牡馬との交配が失敗したとしても、他の種牡馬なら走る仔が生まれる可能性がある……。
そういう考えができるので結果的に牝馬は長く繁殖というかたちで余生を送ることができます。
そして、JRAでは極力多くの仔が競馬場で走ってほしいと考えているので、牝馬の場合は現役時代にたとえ未出走や未勝利だったとしても繁殖牝馬入りしやすいです。
まとめ
競走馬の性別について、かんたんに紹介しました。
牡馬と牝馬で最終的な役割は違うものの、レースに勝つこと、そして、引退後はより強い馬を生むという考えは性別問わず変わりませんね。
性別という概念を見ながら、競馬を楽しみましょう。