競馬の差し馬とは?追い込み馬との違いや代表産駒を紹介
競走馬には様々な脚質がありますが、後方から末脚を伸ばして勝利をつかもうとする差し馬の競馬スタイルが好きな方も多いのではないでしょうか。
ここでは、差し馬がどのような競馬を行う馬なのか、差し馬に有利な条件や、有名な差し馬も開設していきます。
差し馬とは?
とにもかくにも、差し馬とはどんな馬なのか、まず最初に確認しておきましょう。
逃げ馬や先行馬と違い、道中は馬群の後ろで競馬を行い、後半に脚を伸ばすので後半特化型の馬です。
レースにおける差し馬の立ち位置
最初に差し馬はレース中、どの位置で競馬を行うのか解説します。
レース序盤の差し馬
スタートからレース前半にかけて、差し馬は馬群全体の中団から後ろの方で競馬を行います。
差し馬は後半に力を発揮して勝ちを狙いに行くので、初めから飛ばすと疲れてしまうからです。
前を狙う必要がないのでスタートが苦手な馬でもそこまで支障はありません。
レース中盤の差し馬
レース中盤も基本的に差し馬は後方でじっくりと脚を溜めます。
しかし、レースがゆったりとした流れだったり、最後の直線の短いコースなど、前を走る逃げ馬や先行馬に有利な展開となれば、いくら脚を溜めても届かない可能性があります。
レース展開やコースに応じて、レース中盤から徐々にペースを上げて先行集団に取り付こうとする場合もあります。
レース終盤の差し馬
レース終盤はいよいよ差し馬の本領発揮といったところでしょう。
終盤になるとどの馬も最後の力を振り絞って勝負を仕掛けますが、差し馬はそれまで溜めていた末脚をフルに発揮して一気に勝負を仕掛けます。
上がりの速い競馬でゴールを目指すのが終盤の差し馬の競馬です。
差し馬が得意とする条件
差し馬はレース展開によってその末脚を抜群に発揮することができます。
言い換えれば差し馬が苦手とする展開もあるわけですが、差し馬が結果を残しやすい条件はどのような展開か、紹介します。
直線の長い競馬場
差し馬は直線の長い競馬場の方が結果を残します。
なぜなら、差し馬にとって真っ直ぐな距離の方が最高速度を長く維持することができるからです。
逆に、直線の短い競馬場の場合はコーナーからスパートを開始する必要があるので、器用さが求められます。
また、直線の短い競馬場では末脚を発揮しても届かない可能性があるので、瞬発力や、加速性なども問われます。
ちなみに、JRAの競馬場で直線の長い競馬場は東京、阪神、京都、中京、新潟などが挙げられます。
競馬場 | 最大直線距離 |
東京競馬場 | 525.9m |
阪神競馬場 | 476.3m |
京都競馬場 | 403.7m |
中京競馬場 | 412.5m |
新潟競馬場 | 658.7m |
このうち、もっとも直線が長いのが新潟競馬場です。
新潟のスタンド側の直線はほとんど勾配がないので時計も出やすいです。
流れる展開
レースの展開は主に3つあります。
・前半の時計が後半よりも速いハイペース競馬
・前半と後半の時計の差がほとんどないミドルペースの競馬
差し馬にとって有利な展開は前半に時計がでるハイペースの競馬です。
どうしてハイペースの競馬が差し馬にとって有利なのでしょうか。
レース展開を握るのは逃げ馬や先行馬といった前半に前を走る馬です。
前を行く馬は前半極力ペースを落とします。
なぜなら、終盤にかけての体力を温存しておきたいからです。
しかし、逃げ馬が多数揃って前のポジション争いが長くなったり、距離が短いレースではハイペース競馬になることも多々あります。
ハイペースになると前を走る馬がゴールまでの余力を残すことができずに、道中でスタミナ切れを起こし、一杯になります。
そのため、前半で脚を溜めた差し馬が好走しやすくなるのです。
時計の出る馬場
時計の出やすい馬場も差し馬にとって有利です。
時計が出る馬場ほど、最高速度でターフを駆け抜けることができるので、時計のでる馬場であるほど差し馬は好走しやすいです。
ちなみに時計の出る馬場というのは、芝であれば開幕週に近い時期の芝の痛みがほとんど見られない時期です。
常にレコードがでる舞台であれば、差し馬も末脚をいかんなく発揮することができます。
もちろん、良馬場ほど時計が出やすいです。
ダートの場合は雨で馬場が固くなった稍重馬場や重馬場のほうが時計が出やすいです。
良馬場の場合はダートがぱさぱさに乾いているのでスピードよりも力強さが求められます。
不良馬場で馬場が水田のようにぬかるむ条件でも力が求められます。
有名な差し馬
競走馬はいつの時代も第一線で活躍している馬が必ず存在しますが、その中には差し馬もいます。
歴史的に活躍した差し馬にはどのような馬がいるのでしょうか。
紹介していきます。
オルフェーヴル
(引用元:https://www.jra.go.jp/datafile/seiseki/g1/takara/result/takara2012.html)
競馬史上7頭目の三冠馬となったオルフェーヴルは小柄な馬体に反して力強い走り、そして無尽蔵ともいえるスタミナで三冠タイトルを手中に収めた歴史的な名馬です。
スタミナとパワーを兼ねそろえていただけではなく、その気性の荒さも有名で、主戦の池添騎手を何度も振り落とす姿は有名でしょう。
力強い走りを得意としていて不良馬場で開催された日本ダービーにおいても、馬場をものともしない差し切りで勝利を手にしました。
古馬になってからも活躍し、阪神大賞典では向こう正面で失速しながらもそこから巻き返しを図って2着に入線しました。
国内の競走馬の壁としていまだに立ちふさがる凱旋門賞においても、2年連続2着に健闘していて、力が求められる海外の洋芝でも結果を残しています。
当日の気分によって好走と凡走を繰り返した馬でしたが、出し切った時の実力は本物で、引退レースとなった有馬記念では2着に入線したウインバリアシオンに8馬身差をつけて有終の美を飾りました。
ロードカナロア
(引用元:https://www.jra.go.jp/datafile/seiseki/g1/sprint/result/sprint2013.html)
オルフェーヴルと同期のロードカナロアは歴代でも最強のスプリンターです。
国内の短距離G1を制したのみならず、当時凱旋門賞よりも勝つことが難しいといわれていた香港スプリントを日本競走馬として初の制覇だけではなく連覇も果たしました。
短距離レースは距離が短いので、どうしても逃げや先行馬のほうが好走率が高い中で、常に後方から末脚を伸ばして勝利を手にしたロードカナロアは最終的に19戦13勝、2着5回、3着1回と、複勝率100%の抜群の成績で種牡馬入りしました。
産駒のダノンスマッシュが2020年の香港スプリントを制したことで、父仔で香港スプリントを勝利しています。
ウオッカ
(引用元:https://prc.jp/jraracingviewer/contents/yushun/004.html)
64年ぶりにダービータイトルを手にしたのは牝馬のウオッカです。
ダービーではオークスではなくあえて相手関係が手ごわくなるダービーを差し切りで勝利し、一躍有名になりました。
その後、しばらくは凡走が続きましたが、古馬になってから挑んだ安田記念で久々に勝利を手にすると、東京適性の高さが見出されます。
同期のダイワスカーレットとの対決となった天皇賞(秋)では、ダイワスカーレットが逃げ粘る中、一頭だけ抜群の末脚で激走し、ダイワスカーレットに2センチ差先着して秋の盾も手にしました。
最終的にG1タイトルを7つ手にしましたが、そのうちの6つが東京競馬場のもので、府中の長い直線で存分に末脚を活かすことができていました。
ステイゴールド
(引用元:https://prc.jp/jraracingviewer/contents/yushun/024.html)
なかなか勝ち星を手にすることができなかったものの、どんな大舞台でも馬券に絡んでいたことでファンに愛されたのがステイゴールドです。
はじめて手にした目黒記念では後方から忍び寄るように競馬を行い、キャリア38戦目で初の重賞タイトルを手にしました。
その後も大舞台で結果を残したり、重賞タイトルを手にしつつ活躍したステイゴールド。
7歳の冬、引退レースに選んだ香港ヴァーズにおいても最後の直線で末脚を伸ばし、引退レースではじめてG1タイトルを手にし、引退しました。
引退後は種牡馬としても活躍しました。
産駒は父譲りのスタミナとパワーを活かした競馬を得意としていて、丈夫なのも特徴です。
代表産駒はオルフェーヴルやゴールドシップです。
まとめ
差し馬について簡単に紹介しました。
差し馬の特徴を知ることで、馬券予想に活かすことができるでしょう。
出馬表や当日の馬場を見極めて、差し馬を取捨選択し、馬券収支向上を目指してください。