「重馬場になると内枠が有利」と言われている理由を徹底解説
歴史がある競馬には、馬券を購入する際に覚えておくべき格言のようなものが沢山あります。
「重馬場になると内枠が有利だから内枠の馬を買え」というのも、競馬ファンの間ではよく知られている格言のひとつです。
本記事では重馬場になると内枠が有利と言われる理由について解説していきます。
馬場状態は予想をするうえで見逃せない要素のひとつ
競馬を予想する際には、出走馬のこれまでの成績や血統、騎手との相性などさまざまなデータをチェックして買い目に選ぶ馬を選ぶことになるでしょう。
これらは事前に情報を得ることができますが、当日にならなければ得られない情報もいくつかあります。
ひとつはレース前の馬体重です。
前走から今回のレース前調教後の馬体重については3日前くらいまでに知ることができますが、レース当日の馬体重はレース1時間まえにしか判明しません。
馬体重に関して特に注意しなければならないのが「輸送」が必要となる馬です。
たとえば関西所属の競走馬が東京競馬場などのレースに出る場合は東京まで運ばなければなりません。
輸送の際は狭い場所に長時間居続けることになるので競走馬にとってはストレスになり、競走馬の状態によっては調教前よりも体重を大きく減らしてしまうこともあります。
輸送によって体重を大きく減らしてしまっている馬は調子があまり良くないと判断でき、有力馬でも時には買い目から外すという選択が必要となるでしょう。
そして、もうひとつレース当日にならなければ分からないのが「天候」です。
競馬は屋外で開催されるスポーツであるため、雨が降るとコースが水分を含みます。
馬場状態はレース中に逐一報告されていて、状態の良い状態から順に「良」「稍重」「重」「不良」の4段階に分けられます。
「稍重」までの馬場状態であれば競走馬に対しての影響はそこまで大きくなく、各馬が実力を存分に発揮できる状況ですが、「重」以上に馬場状態が悪くなるとさまざまな影響が出てくるので、馬場状態があまり良くないときはそれらも考慮しつつ買い目を決めていく必要があるでしょう。
重馬場になった際の影響
重馬場になった際の影響は芝の上を走る芝コースと、砂の上を走るダートコースでは与える影響が大きく変わります。
芝コースとダートコース、それぞれどのような影響が出てくるのかを理解しておきましょう。
芝コース
芝コースの場合、雨が一定量以上降ると芝生が水分を多量に含むため、競走馬にとって走りづらい状況となります。
そのため走破タイムは良馬場の時と比べるとかなり遅くなるのは当然ですが、それ以上に走るときにパワーが必要になり、スタミナ消費も良馬場と比べるとかなり大きくなるので、スタミナにあまり自信のない馬だったり、距離的にギリギリの馬が出走していた場合は普段のような力を発揮できない可能性が高いです。
ダートコース
ダートコースも雨が降れば水分を含み、場合によっては水たまりができるような時もあります。
しかし馬場が悪くなった時の状況は芝コースとは大きく異なり、ダートコースでは雨が降って馬場状態が悪くなると足の抜けが良くなって芝コースとは逆に走破タイムが早くなります。
雨が降ると逆にタイムが早くなるというのはなかなか想像できないかもしれませんが、砂浜で走った際に普通の場所と波打ち際の濡れているところを走った時の違いを想像してもらうと理解しやすいのではないでしょうか。
重馬場になると内枠が有利といわれている理由
重馬場になると内側が有利となる最大の理由はスピードが出なくなるためです。
競走馬には大きく分けて4つの脚質があり、そのうち「差し」「追い込み」といった脚質の馬は道中は中段あるいは後方で我慢をし、最終コーナーあたりで一気に加速して前の馬を抜くといった戦法が得意なのですが、スピードが出ない「重」以上の悪条件だと持ち前のスピードが生かせず、前に届く前に先頭がゴールしてしまうといった状況になります。
現在の競馬は元々逃げや先行馬が有利なのですが、雨が降って馬場状態が悪くなるとこの傾向はより顕著になります。
そして逃げや先行馬は出来るだけ距離をロスせずにコースを走ることが重要です。
競馬はトラックレースなので、コースの内側を走れば走るほど有利であることは言うまでもありません。
したがって、最初から内側をキープできる内枠が重馬場では有利といわれているのです。
ダートコースは重馬場で内枠有利とはならない
では雨が降ると状況が芝コースとは真逆になるダートコースでも同じく内枠が有利なのでしょうか。
結論から言えばダートコースの場合、必ずしも内枠が有利というわけではありません。
というよりも、元々ダートコースはインコースに砂をたくさん盛っているため、特に前の馬の後ろを走っていると砂や泥を被りやすく、それによって走る気を失ってしまう馬も居て内枠を好んで走る騎手があまりいません。
ダートコースの場合、重馬場になった時は外枠のほうが若干有利だと思っておいたほうがよいでしょう。
内枠と外枠の勝率に差が出てくる条件とは
競馬は一年中365日レースが開催されているわけではありません。
特に芝コースの場合は日数が経過すると馬場状態が変化していき、そのまま使用し続けているとまともに走れるような状態ではなくなるので、一定期間レースが開催されて終了した後は一定期間レースを休んで芝生の回復を待つ事になります。
同じ競馬場でも日数が経過するなど、天候以外の条件によって内枠と外枠との勝率に差が出てくる事例をいくつか紹介するので予想の際の参考にしてみてください。
芝コースの開幕週は内枠がかなり有利
開幕週は芝の状態も良好であり、どの場所であっても走る条件に差はありません。
したがってトラックレースのセオリー通り、内枠を走ることができる馬がかなり有利です。
脚質が逃げや先行であればよりその力を発揮しやすいでしょう。
芝コースの短距離戦は外枠の馬が有利
芝コースは基本的に内枠が有利ではありますが、そうとは言い切れないのが短距離戦です。
中長距離戦ではいかに最後までスタミナを確保しておくかが重要となるので距離のロスは大きなハンデとなりますが、短距離レースではスタミナはそこまで気にする必要がありません。
むしろ外枠のほうがスピードに乗りやすいので大外枠の馬が内枠の馬をごぼう抜きして買ってしまうといったレースが短距離戦では多く見られるため、むしろ外枠のほうが有利だと言われるほどです。
最終週は内側が荒れるので外枠有利?
開幕週は内枠がかなり有利だというのは先に説明した通りです。
このことについて実際にレースに出ている騎手は私たちよりも当然の事ながらよく知っているので、どのレースでも出来るだけ内側のコースを走ろうとします。
するとだんだんと内側の芝が剥がれて凸凹になってしまい、走るときにパワーが必要になったり、足を取られて思うようにスピードが出なくなりやすいです。
特にこれが顕著となるのが最終週で、最終週は内枠で走っている馬よりもあまり馬場が痛んでいない外枠を走っている馬のほうがスピードに乗って勝ち切ってしまうといった事態がしばしば発生します。
条件による内枠と外枠の差は競走馬の実力が拮抗しているときのみ考慮しよう
ここまで馬場状態による枠の有利不利について解説しましたが、ひとつ頭に入れておいてほしいことがあります。
それは「馬場状態や枠だけでは圧倒的な実力差を覆すことは出来ない」ということです。
優れた馬というのは馬場状態が多少悪かろうが、芝が凸凹になっていようがおかまいなしに実力を発揮できるような能力の高さを持っています。
馬場状態や枠順の影響を考慮するのは、あくまでも比較しようとしている出走馬の実力が拮抗していると判断した時だけにしておきましょう。
まとめ
競馬は屋外で行われるうえに、芝やダートといったコースを走ることとなるため、天候による影響を多大に受けます。
馬場状態は天候によって「良」から「不良」までの4段階に分けられているのですが、重や不良にまで馬場状態が悪化すると走るときに影響が出てくるようになります。
芝コースの場合、雨が降って重や不良馬場になるとスピードが出なくなって走るときにパワーが必要になり、スタミナ消費が激しくなりますが、ダートコースの場合は逆に湿った影響で足の抜けが良くなり、スピードが出やすくなります。
したがって枠による有利不利も芝とダートでは異なり、芝コースの場合は距離のロスが少ない内枠が有利ですが、ダートの場合は走りやすくなるのでスピードを出しやすい外枠が有利な傾向にあります。
また、芝コースでは開幕週と最終週でも馬場状態が大きく変化し、枠による有利不利が出てくるので覚えておきましょう。