競馬で差し馬を買うメリットとは?差しと追い込みの違いも解説
競馬で差し馬を買う場合は差し馬のメリットをしっかりと把握しておく必要があります。
基本的に差し馬は展開に左右されるケースが多く、先行馬と比較すると不利になるケースも多いですが、競馬場のコースなどによっては逃げ先行馬よりも有利な場合があります。
この記事では差し馬を買う際の目安やメリットを解説していきます。
競馬の脚質の1つである差し馬の特徴
競馬には色々な脚質がありますが逃げ馬や先行馬はスタートが上手く、前に行く力に優れた馬であることが多いのに対して、差し馬や追い込み馬はスタートが遅く、序盤に前に行く力が劣った馬であるケースが多いです。
ただし後方からの脚質で上位のクラスに昇りつめるためには、一瞬の末脚の切れ味の鋭さという大きな決め手を持たなければ、OPクラスにまで上がることは不可能です。
ですから差し馬で活躍する馬というのは基本的に騎手のGOサインと共に、切れ味の鋭い末脚を発揮できる力を持っていると考えることができます。
実際に競馬では逃げ馬が展開的には最も有利とされていて、勝率・複勝率・回収率ともに逃げ馬が最も高い数値を誇ります。
しかしこの数値はあくまでも全ての条件やコースを総合的に見た数値のため、コースや条件別に見ると有利な脚質が大きく異なってきます。
このように差し馬は芝ダートを問わず全てのレースを対象にすると成績は芳しくありませんが、実力が拮抗しやすい条件クラスやOPクラスのレースであれば、勝ち負けになる可能性も高く、また開催時期による馬場状態の傾向によっても有効な脚質となります。
競馬で差し馬を買うメリット
差し馬は全体的に見ると逃げや先行馬と比較しオッズが高くなる傾向があり、配当の妙味がある点が最大のメリットといえます。
例えば単純に脚質だけで判断すると、見た目が同じ実績の馬が逃げ・先行・差しにそれぞれ1頭ずつ計3頭いる場合、逃げ先行馬のオッズは下がりがちですが、差し馬は他の2頭と比較してもオッズ的にはそれほど高くならない傾向があります。
このようにオッズに旨味が出る理由としては、逃げ先行馬と比較すると展開に左右されるリスクがあるからであり、実力のある差し馬よりも実力のある逃げ先行馬の方が必然的にオッズが上がる可能性が高いため、オッズに旨味があるという点は差し馬を買う最大のメリットとなります。
しかし実際のレースでは脚質に加え馬に跨る騎手などの実力も大きく加味されるため、単純に脚質だけでオッズが形成されることはありません。
ですが差し追い込み馬は比較的人気の盲点になりやすくオッズの旨味があるケースが非常に高いため、差しが良く決まるコースや条件などは特に積極的に狙いたいところです。
また展開が予想しやすく直線でも前が壁になりにくい8頭立てなどの少頭数のレースよりも、フルゲート18頭立てのレースの方が差し馬のオッズの恩恵を大きく受けることができるため、差し馬を買う場合は少頭数よりも多頭数のレースを積極的に狙うようにしましょう。
競馬で差し馬と追い込み馬の違い
競馬で差し・追い込み馬は共に道中は前に行かずに、脚をためて直線の末脚を決め手とする脚質になりますが、具体的に差し・追い込み馬の明確な違いというのはありません。
一般的に言われるのは差し馬は道中は5番手以下の中団に位置している馬を指し、追い込み馬はこの差し馬が形成しているグループよりもさらに後方に位置している馬を指します。
具体的には追い込み馬は馬群を嫌う馬や、スタートがあまり得意でない馬であるケースが多く、道中は後方で脚をためて向こう正面から4コーナーを終えるまでに、大外を回して進出する馬が多いです。
逆に差し馬は道中は中団に控えつつも、レース展開によっては早めに仕掛けるなどの臨機応変な競馬が取りやすいですが、馬群に入っても動じないタフな馬が多く、道中も無理に外を回さずとも馬群の形成状況に応じて、内外を問わずに前に進出する力を持っているのが差し馬の特徴です。
差しも追い込みを直線の末脚の鋭さが最大の武器ですが、追い込みの方がコースロスとなる不利な外をコーナーで回る可能性が高いためより鋭い末脚が求められますが、差し馬は末脚の高さに加えて逆に中団で形成される馬群を捌く騎手の能力や、展開に応じて臨機応変に動くことのできる馬の器用さが求められます。
ただしこれはあくまでも実力の備わっているOPクラスの差し・追い込み馬のことであり、実力が備わっていない未勝利クラスでは単純にスピード不足から中団から後方の位置取りなってしまい、そのまま直線も伸びることなくレースを終える馬が数多くいます。
下のクラスのレースでは差し・追い込み馬を狙う際にはこういう馬を的確に見抜き、馬券から排除する作業も必要です。
差し馬が有利な条件とは
では差し馬は実際にどういった条件で有利になるのでしょうか?
具体的に差し馬が有利になる条件は以下の通りです。
②逃げ先行馬が多いレース
③開催後半のレース
④距離の長いレース
直線の長い競馬場は差し馬が決め手となる鋭い末脚を発揮しやすく、差し馬にとって有利な競馬場といえます。
具体的には直線が最も長い新潟競馬場外回りコースや、直線が長く坂のある東京・中京・阪神競馬場などは差しが有利な傾向にあります。
ただし新潟競馬場や阪神競馬場は走るコースによって、内回りと外回りで直線の長さが大きく異なるため、差し馬を狙う際は該当のコースの直線が長いコースなのかを必ず確認するようにしましょう。
また競馬場を問わず逃げ先行馬の多いレースはレースがハイペースになりやすく、前が崩れる可能性が高いため差しが有利です。
馬の脚質を確認し逃げ先行馬が多いレースは、積極的に差し馬を狙っていきたいところです。
そして芝のレースに関しては競馬場毎に開催前半はインコースの芝コンディションが良いため、逃げ先行有利の展開になりがちですが、開催が後半になるほど直線の内の馬場が荒れるため、外を回しやすい差し馬は有利となります。
特に新潟競馬場や東京競馬場はその傾向が顕著になりやすいため、差し馬を狙う場合は開催競馬場の芝のコンディションには注意したいところです。
さらには距離が長くなればなるほど差し馬は有利な脚質で、具体的には2000mを超える距離から差し馬は有利な脚質となります。
なぜなら逃げ先行馬は常にペースを維持する必要がありますが、差し馬は前のペースに左右されずに比較的マイペースで道中を進むことができ、スタミナを温存することができるからです。
逆に短い距離で差し馬が内枠を引いた場合は、馬群に包まれて外に持ち出すことができずに前が壁になる可能性が高くなりますが、距離が長くなればなるほど外に持ち出しやすくなるため、差し馬の枠順による有利不利は距離が長くなるほどなくなります。
差し馬が有利になる具体的な条件を紹介
例えば2021年から過去10年の東京芝2400mで行われた「日本ダービー」の脚質分布を見てみると、馬券対象になった30頭の内訳は逃げ馬2頭、先行馬8頭、差し馬17頭、追い込み馬3頭となっており、3着以内という視点で見ると、日本ダービーは圧倒的に差し馬が有利な結果となっています。
東京競馬場の長い直線に加えて2400mという長い距離、そして開催中盤という芝のコンディションなど、複数の要素が絡み差し馬が有利となる環境が構成されているためです。
また夏の後半に新潟競馬場外回り1600mで開催される「新潟2歳ステークス」を脚質別にみてみると、過去20年で60頭中逃げ馬3頭、先行馬15頭、差し馬27頭、追い込み馬15頭という結果となりました。
これは道中前につけるよりも後ろの馬の方が圧倒的に有利となっており、直線に入るまでに外を回しやすく直線で痛んだ内よりも、直線で外を取りやすい差し馬が最も有利であることがデータからわかります。
今回紹介した以外にも特別戦や重賞レースは、レース毎に過去の傾向が調べやすいため、メインレースなど名前のあるレースを買う場合には、どの脚質が有利なのかはデータを良く調べた上で、有利な条件のレースで差し馬を選びたいですね。
差し馬を買うデメリット
差し馬を買う際の大きなデメリットは「レース展開に左右されやすい」という点です。
具体的に展開に左右されやすい理由は大きく以下の3つです。
②馬が壁になるリスクがある
③距離が短いほど枠の影響を受けやすい
競馬でペースを表現する目安として1000mの通過タイムが例に挙げられる場合が多いですが、具体的に60秒を切る場合はハイペース、60秒を超える場合はスローペースと2つのペースで考えることができます。
一般的にスローペースの末脚勝負になるほど差し馬が有利と言われますが、これは必ずしもそうではなく極端なスローペースは差し追い込み馬には大きな不利となります。
例えば芝のマイルのレースでは2022年時点でレコードタイムが1分30秒であるのに対し、一般に1分33~36秒前後で決着するのが一般的です。
この場合に仮に逃げ馬の1000m通過タイムが63秒で通過した場合は、後ろの馬は必然的に63秒よりも遅い通過タイムとなり、後ろの馬が勝つためには30秒を切る末脚を発揮する必要があります。
ちなみに国内の競馬での最速の末脚は2022年現在では31秒台が限界のため、仮に31秒台の末脚を差し馬が発揮したとしても前の馬を捕まえることは困難です。
このように逃げ馬に極端なスローペースで逃げられることは、差し馬にとって最も勝つのが困難になることを意味します。
またレースは最大で18頭で行われますが、直線では馬が大きくばらけ、後ろの馬は必然的にばらけた馬を見ながら、時には外を回し時には馬の内を突く形で追いかける必要があります。
この判断は一瞬の出来事であり判断を1つ間違えると、差し馬や追い込み馬など後方から行く馬は、前が壁になって本来の末脚を発揮できずに敗北することもあります。
これはいわゆる「前が壁になる」という状態で、差し馬は「脚を余す」という不完全燃焼の状態でレースを終えることに他なりません。
これを避けるためには馬の実力以上に騎手の判断力が重要となり、差し馬を買う場合は騎乗する騎手自身の実力や、騎手が馬をコントロールできているか過去の実績から騎手との相性が良いのかを、しっかり見分けるようにしましょう。
基本的には短い距離のレースでも差しは決まりますが、距離が短くなるほどスタートの遅い差し馬は枠順の不利が大きくなります。
なぜなら短い距離で差し馬が内に入った場合は、ある程度前につけないと外からくる先行馬に被せられる形で内に包まれてしまい、直線までに外に持ち出すためには大きく馬を後ろに下げる必要があるからです。
もちろん短い距離でも外に出せる機会もありますが、長い距離と比較すると外に馬を持ち出す機会が大きく減るため、基本的に短い距離での内枠の差し馬は大きな割引が必要になります。
ただしOPクラスの短距離をメインに活躍する馬は、内枠を引いた場合は前を主張し先行脚質に切り替えるなど、自在性の高さを持ち合わせている馬も多く、一概に内枠が不利とは判断できないため過去の成績と枠順による位置取りをしっかりと確認するようにしましょう。
まとめ
差し馬を買う際に最も大きなメリットはオッズの旨味があるという点ですが、事前に差しが決まりやすい競馬場やコースを知識として把握しておくことは、差し馬を買う際の大きな判断材料にもなります。
ですから差し馬を買う際にはデメリットをしっかり把握し、差し馬にとって有利な条件やコースで買うことがなにより重要です。
また差し馬を買う際には騎乗する騎手の実力も重要なポイントになり、これは騎手の実力が劣るほど道中や直線で馬が不利になるケースが高くなるためです。
今回は詳しい説明を省きましたが、騎手の実力や得意な競馬場などの力関係は、しっかりと把握した上で差し馬を買う判断材料として活用していきましょう。