競馬は本当に内枠が有利で外枠が不利なのかを検証
よく競馬は内枠が有利と言われていますが、実際には決して内枠が有利というわけではなく、コース形態や馬場の状況などに応じて枠順の有利不利は大きく変化します。
この記事ではどの競馬場のどのコースが内外の有利不利が顕著なのかを、具体的にデータを交えながら解説していきます。
競馬で枠順の有利不利とは
競馬で枠順を予想に活かすためには、まずは枠順の知識を理解し内枠・外枠それぞれのメリット・デメリットを把握した上で、具体的にどのコースが有利不利なのかを知ることが重要です。
陸上のトラック競技などでは400mの距離までは、走るレーンが決められていますが、内外でスタート地点が大きく異なっており、これは内外同じ位置でスタートすると圧倒的に内が有利になるからです。
この有利・不利を無くすために、スタート地点を外側のレーンは前に、内側のレーンは後ろに設定されています。
しかし800mを越えるとオープンレーンと呼ばれ、コーナーを巡って激しいポジション争いが行われ、陸上で中距離のトラック競技で勝つためには、ポジション争いを制することが必須です。
そして競馬のレースは距離を問わず全てオープンレーンで行われ、どの距離でもポジション争いが必須となります。
単純にマイペースで走るのであれば、最短距離である内を走った方が有利ですが、実際にはポジション争いからペースが乱れ、特にコーナーでは遠心力が働きやすい内側よりも外側が有利なケースもあります。
ここではまず最初に内枠・外枠それぞれが、どういった点で有利で不利なのかというメリット・デメリットを個別に解説していきます。
競馬で内枠はなぜ有利なのか
競馬で内枠が有利な点は、スムーズに進めば有利なインコースを取りやすいという点です。
つまり最短距離で走ることができるコースを走ることができるため、内枠の馬は外枠の馬と比較すると距離面で有利に競馬を行うことができる点が大きなメリットです。
競馬はオープンレーンのため普通に走れば内枠が圧倒的に有利となるからこそ、内枠の有力馬にスムーズに競馬をさせないために、激しいポジション争いが行われます。
ただしこの内側有利をレースで主張するためには、基本的には馬自身がスタートセンスが良く、先行できるスピードを持っていることが前提です。
これは仮に、内枠を引いてもスタートで出遅れたりスタート後の加速が遅い馬は、ポジション争いによって外の馬から被せられ、進路を塞がれる可能性が高いためです。
ですから内枠を活かすためには差し・追い込みが中心の馬よりも、逃げ・先行馬など前半で早い脚を使える馬である必要があり、この傾向は距離が短くなればなるほど顕著です。
また内枠の馬は必然的にコーナーで内を回る可能性が高く、コーナーは内に行くほど遠心力がかかることから、コーナーリングの上手い馬にとっては有利ですが、コーナーワークの下手な馬には大きな不利となり、コーナーワークの苦手な馬が内枠を引いた場合は、むしろ内枠はデメリットとなります。
馬のコーナーワークが上手いかどうかの判断は素人には難しいですが、基本的には逃げ先行馬は早いスタートに加え、コーナーワークが上手い馬が多いため、差し追い込み馬ほど内枠を引くと、上述の枠の主張に加えてコーナーワークで不利となると言えます。
競馬で外枠は本当に不利になるのか
外枠のメリットはスタートから馬群に揉まれることが少なく、序盤にマイペースでレースを運べる点です。
例えばスタートの遅い馬であれば馬群に包まれるリスクはなくなり、逆にスタートや先行力のある馬でも自ら前を主張することなく、相手の出方に合わせてマイペースで前を主張することができます。
それに対し外枠の大きなデメリットとなるのが、スタート後コーナーを回る前までに内に切り込む必要があるため、大きな距離ロスが発生する点です。
上述の通りスタートが早くコーナーワークの上手い馬がスムーズなレース運びができれば、経済コースを走ることができる内枠が断然有利ですが、これは逆に考えると経済コースをスムーズに走ることが厳しい外枠は不利ということになります。
ただしスタートが遅くコーナーワークが苦手な馬は内枠では大きな不利となりますが、こういった馬が外枠を引くことができれば、逃げ先行勢の位置取りに合わせて、マイペースでレースを運ぶことができるため、馬の脚質によっては外枠はむしろデメリットではなくメリットと言えます。
特に函館・札幌・小倉のみで開催されるダート1,000mのレースは、すぐコーナーに突入するコースの形態から、内枠の馬は必然的に前に付けなければ勝つことはできませんが、外枠はマイペースで状況に応じては1歩下がることもできるため、基本的に有利とされています。
他にも東京ダート1,600mに代表される芝スタートのダートコースは、コース形態から外枠の芝の距離が最も長いため、スタートで芝の恩恵を受けやすく有利とされています。
過去のデータから見る内枠・外枠の具体的な解説
では具体的に競馬場毎の内外の有利不利はどうなっているのでしょうか?
ここでは2017~2021年度に渡る過去5年間の実際のデータを見ていきます。
改装中の京都競馬場を除く全競馬場の1・8枠の勝率は以下の通りです。
1枠勝率 (ダート) |
8枠勝率 (ダート) |
1枠勝率 (芝) |
8枠勝率 (芝) |
|
東京 | 5.4% | 7.3% | 8.2% | 7.8% |
中山 | 6.6% | 7.3% | 7.7% | 7.4% |
阪神 | 5.7% | 8.7% | 8.5% | 6.3% |
中京 | 7.5% | 6.5% | 7.9% | 6.1% |
小倉 | 5.6% | 6.2% | 5.6% | 6.7% |
福島 | 7.6% | 7.7% | 7.6% | 6.1% |
新潟 | 6.5% | 8.2% | 6.0% | 7.4% |
札幌 | 7.6% | 8.4% | 9.5% | 7.7% |
函館 | 6.7% | 9.7% | 9.6% | 6.7% |
ダートでは中京を除く全ての競馬場で外枠が勝率を上回る形となっており、逆に芝は小倉を除く全ての競馬場で内枠が上回っていることから、全体的な傾向としては芝は内枠有利でダートは外枠有利であることがデータからわかります。
特に札幌・函館競馬場の芝の勝率は高く、夏の北海道開催は基本的に内枠は大きなアドバンテージとなる可能性が高いといえます。
また函館競馬場はダートの外枠の勝率も高いため、枠順から狙うのであれば夏の北海道開催は狙い目となることがわかります。
数値的な差はそこまで大きくないため、あくまでも迷った時の参考程度ですが、芝は内枠有利でダートは外枠有利、そして夏の北海道開催は枠順の傾向が顕著になる点は、知識として覚えておいて損はありません。
内枠が有利なコースは?
では次に具体的にどの競馬場のどのコースが、最も内枠による影響が大きいのかを見ていきましょう。
2017~2021年度に渡る過去データでコース別に内枠が有利となっているベスト5は以下の通りです。
1枠勝率 | 8枠勝率 | 数値の差 | |
中京芝1,200m | 12.1% | 4.1% | 8.0 |
中山芝2,200m | 11.9% | 5.7% | 6.2 |
東京芝2,000m | 13.0% | 7.9% | 5.1 |
函館芝1,800m | 13.0% | 8.1% | 4.9 |
阪神芝1,600m | 9.8% | 5.4% | 4.4 |
他のコースと比較しても内枠の勝率が群を抜いて高いのが、短距離である中京芝1,200mとなりました。
このコースはコーナーまでの距離がスプリントの中でも特に短く、外に膨れやすい中京のコーナーでは外枠は大きな距離ロスとなることから、他のコースと比較しても屈指の内枠有利なコースです。
また馬場状態が渋るとさらに内枠の勝率は上がり、良馬場よりも稍重以上の方が勝率が高いため、雨の中京スプリントは内枠は確実に押さえておき、外枠はむしろ迷ったら枠で消しても良いといえるコースと言えます。
次に高いのが中山芝2,200mです。
こちらも中山外回りコースを使用する特殊なコースで、一般に逃げ先行有利なコースとも言われますが、その影響からか外枠は苦戦傾向にあります。
こちらも中京1,200mと同じく良馬場よりも稍重以上の荒れた馬場の方が、内枠有利の傾向がより顕著となり、特に雨の日の外枠の馬は大幅な割引が必要なコースです。
3番目に高かったのが東京芝2,000mです。
こちらは1コーナー奥のポケット地点からのスタートという、東京競馬場のコースの中でも一番特殊なコース形態となっており、スタートしてすぐに第3コーナーを曲がる必要があるため外枠は大きな距離ロスとなります。
またこのコースも良馬場よりも稍重以上の荒れた馬場になるほど、1枠の勝率があがり内枠の傾向が顕著となるため、雨の日の内枠の馬は人気を問わず注意が必要です。
今回具体的に紹介した3つのケースのうち、中京1,200mと東京2,000mに関してはGⅠレースも行われるコースでもあり、いずれも稍重以上の馬場になるほど内枠の有利が顕著になるコースとなるため、競馬予想に迷った時は思い切って内枠の馬を買ってみるのも有効な馬券戦略と言えます。
外枠が有利なコースは?
最後に具体的にどの競馬場のどのコースが外枠の影響が大きいのかを見ていきましょう。
2017~2021年度に渡る過去データでコース別に外枠が有利となっているベスト5は以下の通りです。
1枠勝率 | 8枠勝率 | 数値の差 | |
新潟芝1,000m | 1.3% | 13.1% | 11.8 |
函館ダート1,000m | 7.1% | 15.1% | 8.0 |
中京芝2,200m | 4.2% | 10.9% | 6.7 |
中山芝1,800m | 5.0% | 9.0% | 4.0 |
阪神ダート1,400m | 5.0% | 8.5% | 3.5 |
外枠有利の1位は新潟芝直線1,000mです。
こちらは開幕が進むにつれて内馬場の荒れが顕著となり、馬場の荒れにくい外ラチを走る馬が最も有利なコースとして、今では競馬ファンによく知られているため、外枠の馬は人気が上がる傾向があります。
内枠の馬は枠順だけで人気を大きく落としますが、開幕週を除き内枠が馬券に絡むことは滅多にないため、基本的には1枠は無条件で消しといえるコースです。
外枠有利で2位となったのが函館ダート1,000mです。
このダート1,000mという距離は函館・札幌・小倉の3つの競馬場でのみ開催されており、実はそれぞれにいくつか違いがあります。
まずコース形態の違いとして、3コーナーまでが昇り坂となる函館に対し、下り坂となるのが小倉競馬場、札幌競馬場は高低差の無いフラットなコースです。
そして次に出走頭数ですが、北海道の2場はフルゲート12頭に対し、小倉はフルゲート14頭となり、札幌・函館はフルゲートでも4枠までは馬番と同じで、小倉はフルゲートでも2枠までは馬番と同じです。
このように最大出走頭数とコース形態に大きな違いがある点は知識として把握しておきましょう。
基本的にはマイペースで行くことのできる外目の枠の方が有利な傾向のあるダート1,000mでは、枠順と馬の脚質から展開予想が重要になってきますが、その中でも特に函館の外枠有利の傾向が3つの中で非常に高いことから、函館ダート1,000mの1枠馬(1番)は8枠と比較すると大幅な割引が必要です。
ただし同じ内枠でも2枠(2番)の勝率は13.1%と非常に高い数値であり、また同じ外でも馬番でみると大外12番よりも11番の方が勝率が高いため、函館ダート1,000mは枠による成績だけでなく、馬番による過去の成績も把握しておく必要があります。
基本的に外枠有利なコースは、内枠有利なコースと同じく良馬場よりも、稍重以上の荒れた馬場の方が勝率が上昇する傾向にあります。
またここで紹介した以外にも芝・ダートを問わず複数のコースがあるため、外枠有利なコースは知識として把握することで、枠順が大きな予想材料の1つとなります。
まとめ
今回は内枠・外枠の知識と実際に有利な傾向が顕著な具体的なコースを紹介しました。
ここで紹介した新潟芝1,000m、函館ダート1,000m、中京芝1,200mの3つのコースに関しては、ポイントの差が激しいため、競馬予想の際には枠順の有利不利も判断材料に取り入れる必要があります。
また今回抽出した条件は未勝利戦からOP戦まで全てのレースを対象としていますが、クラス条件別にデータを抽出することで、コースによっては独自の傾向が出ます。
こういったデータに興味のある方はぜひ自分で条件を選択し、データ分析を行ってみましょう。