競馬の重要データのひとつ「上がり」とは?予想への活用法も伝授
競馬のレース中継を見ていると、必ずと言っていいほど耳にするのが「上がり3ハロン〇〇秒」という言葉です。
「上がり」というのは競馬の専門用語のひとつで、競馬ファンには御馴染みですが、最近競馬に興味を持ったという人には何を意味するのか全く分からない言葉になっているのではないでしょうか。
実は「上がり3ハロン」は競馬の予想をするうえでかなり重要なデータのひとつになっています。
本記事では上がりについて詳しく解説するとともに、予想に活かすための活用法も伝授するので、自分で予想をするときの参考にしてみてください。
競馬の話をすると必ず出てくる「上がり」とは?
競馬ではレースや調教の際に、レース序盤のことを「テン」中盤を「なか」終盤を「終い」または「上がり」と呼んでいます。
つまり「上がり」とはレース終盤を意味する言葉だと認識しておけば間違いありません。
日本の競馬で上がりといえば距離3ハロンの事を指す
次に「ハロン」についてですが、ハロンは距離を意味する言葉で、1ハロンは200mです。
ということは、競馬中継などを観ていてよく耳にする「3ハロン」とは600mということになります。
したがって「上がり3ハロン」は、「ゴールの600m手前からゴールするまでの距離」を指しています。
たまに「上がり3ハロン」ではなく、単に「上がりが速い」とか「上がりタイム」などという表現を使うこともありますが、これらもすべてゴール600m手前からゴールまでの距離だと認識しておくと、前後の言葉の意味も理解できるはずです。
上がりは予想をするのにとても重要なデータのひとつ
ここまでで上がり3ハロンの意味は理解してもらえたでしょうか。
なぜ競馬の話の時に「上がり3ハロン」がよく出てくるのかというと、この数字は予想をするのに非常に重要なデータのひとつだからです。
レース終盤600mというのは、競馬のレースにおいて勝敗を決めるもっとも重要な部分となっています。
差しや追い込みの馬はこのあたりの距離から持っている能力を爆発させて前の馬に猛追しますし、先行の馬が逃げの馬を捉えるのも、逃げている馬が後続を更に突き放しにかかるのもちょうど残り600mあたりです。
持てる力を最大限に発揮する部分であるということは、上がり3ハロンのタイムはそのまま「その馬の能力を表す数値」ということになります。
競馬の出馬表には各出走馬の過去成績が提示されますが、その際には必ず「上がり3ハロンタイム」が記載されています。
着順を予想する際には「上がり3ハロン最速の馬」を必ずチェックしておきましょう。
最速の上がりを出した競走馬とは?
ではこれまでの日本競馬史上最速の上がりタイムを出した競走馬はどの馬なのでしょうか。
上がり3ハロンが速い馬というのは強烈な末脚を持っている馬だと認識しておいて間違いありません。
強烈な末脚という言葉で真っ先に連想する馬といえば「飛ぶように走った」ディープインパクトではないでしょうか。
レース映像を観ても他の馬とは明らかに加速力が違うので、上がり3ハロンはとても早そうです。
しかし、上がり3ハロンが最も早い競走馬はディープインパクトではありませんでした。
上がり3ハロンが最も早かったのは「イルバチオ」の31.6秒です。
この名前が出た瞬間に「あの馬か!」とすぐに思い浮かんだ人は相当な競馬通だと思います。
スプリンターズステークスやマイルチャンピオンシップといったG1レースには出走しているものの、掲示板にはまったく届かない成績であり、成績を見る限りでは残念ながら歴史的名馬と呼べる競走馬ではありません。
ちなみにこのタイムは新潟競馬場で開催されている「アイビスサマーダッシュ」というレースでのタイムとなっています。
アイビスサマーダッシュはカーブが一切ない直線のみという一風変わったレースであり、上がり3ハロンタイムは非常に速くなりやすいです。
上がりが速いからといって軸にできるとは限らない
結果が表しているように、上がりが速いからといってその馬が必ず勝つとは限りません。
いくら上がりタイムが速いといっても、残り600mで先頭の馬を捉えるような位置にいなければ勝つことは難しいでしょう。
競馬というのは上がり3ハロンだけではなく、そこまででどれだけ良い位置で走れるか、そしてその馬の能力が最大限に発揮できる勝負所を見極められるかや、芝の一番良い状態のところを走れるかなど、さまざまな要素が噛み合った競走馬が勝てる競技です。
上がり3ハロンはあくまでも予想をする際に参考になるデータのひとつに過ぎないということを頭に入れつつ活用していきましょう。
上がりを予想に活用するための手順
予想をする際に上がり3ハロンをどのように活用していけばよいかを本項目で詳しく解説しています。
しかし本項目で解説する以外にも上がり3ハロンの数値で色々なことが分かるので、自分なりに上がり3ハロンでどのような事が判別できるかを考えてみてください。
上がりが速い馬は差し・追い込み馬だと認識しておこう
前項でも少し触れましたが、上がりが速い馬というのは基本的に「差し」「追い込み」といった」走り方を得意とする馬です。
差し・追い込みの馬たちは終盤までは中段より後方に控え、最終コーナーで一気に末脚を爆発させて前方の馬たちを抜き去り、1着になるという戦法を得意としています。
差しや追い込み馬が勝つレースというのは観ていて気持ち良いのですが、中段よりも後方で走るということはその分馬群に行く手を阻まれやすいです。
いかに上がりタイムが他の馬より飛び抜けていても、進路を塞がれてしまってはその自慢の末脚を生かすことができません。
上がり3ハロン最速の馬は注目すべき馬であることに間違いはありませんが、安易に軸にして良い馬ではありません。
差しや追い込みの馬は印象に残りやすいので、前走で派手な勝ち方をすると、実はその馬本来の能力にそぐわない人気となり、オッズが低くなりやすいです。
差しや追い込みの馬でオッズが低く人気の馬がいた場合は、上がりタイムを調べると同時にその人気が実力と伴っているのかどうかも同時にチェックしておくと、より確実に軸馬を選定することができます。
強い逃げ・先行馬がいる場合はそちらの方が優位に立ちやすい
上がり3ハロン最速の馬を見つけたら、次は「逃げ・先行の馬で強い馬はいないか」をチェックします。
現代の競馬では、同じくらいの実力であれば逃げや先行など前のほうでレースができる馬のほうが有利です。
前のほうでレースができるというだけで先頭との距離が短い、馬群に阻まれにくいなど、差しや追い込み馬と比較すると有利な条件で走ることができます。
上がり3ハロン最速の馬と、強い逃げ又は先行の馬のオッズを比較して同程度、または逃げ先行馬がオッズが低いようであれば、そちらを軸にして買い目を組み立てたほうが的中はしやすいです。
上がりが同じタイムならトータルタイムが短い馬を選ぼう
出走馬を比較していると、上がり3ハロンのタイムがまったく同じ馬が出走しているときがあります。
すべて買い目に含めるならば問題ありませんが、どちらかを候補から外さないといけないという場合は、「トータルタイム」に注目しましょう。
トータルタイムが短い馬の方が全体的に速いペースでもスタミナを切らすことなく走れる馬ということになります。
そのほか比較する要素としては「上がりタイムに波はないか」「今回のレースと同じコースを走った経験があるかどうか」などがあります。
様々な条件で比較してみて候補を決めるようにしましょう。
有力な逃げ・先行馬と上がりが最も速い馬とを比較して軸を決めよう
有力な逃げ・先行の馬と、上がり最速の馬を見つけることができたら、レースがおこなわれるコースの条件や展開などを予想してどちらを軸にするかを決めます。
展開を予想するのはなかなか難しいのですが、例えば逃げや先行の馬が協力であったとしても、ライバルがいるかどうかで展開は大きく変わります。
現代競馬は先行が強いので、先行が1頭だけということは極めて少ないですが、逃げ馬が1頭だけというレースは多々あります。
逃げ馬が1頭だけの場合は争う相手がいないので、逃げ馬が自由に自分のペースで走れます。
そのため、終盤になってもスタミナが十分残っている状態でスパートをかけることが可能です。
この展開だと先行馬は追いつける可能性がありますが、差しや追い込み馬だといかに上がりタイムが速くても前に追いつくことは難しいでしょう。
しかし逃げ馬が複数出走している場合は前の争いが激化します。
逃げ馬同士で争えばスタミナをロスするでしょうし、逃げ馬を追いかけつつレースをする先行馬もスタミナを消費しながら走ることになるでしょう。
この展開だと速い上がりタイムを存分に活かすことができるので、差し・追い込み馬で上がりタイムが速い馬を軸にする価値は十分あります。
また、最終直線が長いコースであればあるほど、上がり3ハロンが速い馬が実力を発揮しやすいです。
中央競馬が開催される競馬場だと東京、新潟、阪神の各競馬場が最終直線が長い競馬場となっています。
まとめ
上がりとは、競馬の終盤部分を指す言葉で、ハロンは距離を表し、1ハロンは200mです。
つまり上がり3ハロンとはゴール手前600mからゴールした時までを表しています。
ゴール手前600mはどの馬も自分の持てる全ての力を出す部分であり、上がり3ハロンのタイムはそのままその競走馬の実力を数値化したものと考えて間違いありません。
したがって、上がり3ハロンは出走している競走馬の力関係を比較するのに非常に重要なデータなのです。
しかし、上がり3ハロンがいくら速いからといってその馬が連勝するというわけではありません。
そもそも上がり3ハロンが速い馬というのは、中段より後方からレースをすることを得意とする「差し」や「追い込み」といった脚質の競走馬です。
スパートをかけたときに自分が走る道が開けていればその自慢の脚を遺憾なく発揮できますが、差しや追い込み馬は馬群に阻まれることが多く、そうなると上がりタイムがいくら速くても上位に入着することはできません。
上がりタイムは予想をする上で重要なデータではありますが、それだけで軸となる馬を決めるのではなく、逃げまたは先行馬で強い馬がいないかをチェックし、その馬との実力差を比較しつつレースがおこなわれる競馬場やレース展開なども加味しながら軸にする馬をきめるようにしましょう。