競馬における重賞レースとは?それ以外のレースについても解説
競馬のレースで最も有名なレースといえば「有馬記念」を真っ先に思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。
傑出した能力の馬が有馬記念に出走するとニュースなどでも取り上げられるため、競馬にほとんど興味がない人でも知っているくらい知名度は高いです。
「有馬記念」、そして有馬記念に次いで地名度が高い「天皇賞」や「日本ダービー」も全て「重賞」と呼ばれるレースとなっています。
本記事では重賞レースについて詳しく解説していきます。
全ての競走馬が全部のレースに出られるわけではない
競馬の中継を見ていると、「〇〇記念」や「〇〇杯」といった名前が付いているレースがあれば、そういった名前がまったく付いていないレースもあります。
競馬のレースは「階級制」のようなものになっており、全ての競走馬が全部のレースに平等に出走できるわけではありません。
スタートラインはどの競走馬も同じなのですが、成績によって最終的に走ることができるレースというのは全く違ってきます。
重賞レースは競馬のあらゆるレースの中でも最高峰に位置づけされているレースと認識しておけばよいでしょう。
すべての競走馬は「重賞」で勝利することを目指してレースに出走している
多くの競技の選手は「オリンピック」に出場するか、「プロ」の世界で活躍することを目指して日々練習をし、試合に出場しています。
競馬に関してもそれはまったく同じで、登録されている全ての競走馬は最終的に「重賞レース」に出走することを目標に調教をしたりレースに出場したりしているのです。
重賞で勝利することのメリット
何故全ての競走馬が重賞レースに出走し、勝利することを目指しているのかというと、重賞レースに勝利すると一般レースとは比べ物にならないほど大きなメリットがあるからです。
具体的にこれから紹介する2点が重賞レースに勝利することの大きなメリットとなっています。
獲得賞金が桁違いに高い
競馬のレースに出走すると着順に応じて1着から5着までの競走馬に対して賞金が支払われます。
レースの種類に関しては後ほど詳しく解説しますが、どの馬もかならず最初のレースとして走ることになる「新馬戦」の場合、1着の賞金は700万円、「未勝利戦」の場合は500万円です。
しかし重賞レースになると1着賞金の金額は桁違いに高額となります。
例えば7月に行われる夏の重賞レース「七夕賞」の1着賞金は4,300万円です。
では競馬のレースのなかで最も知名度が高い「有馬記念」で1着になると賞金はいくらになるのでしょうか。
答えはなんと「4億円」です。
これまで有馬記念の賞金は3億円だったのですが、2022年から4億円にアップしました。
出走する相手は強敵ばかりですが、同じように調整をして同じようにレースに出走させるのであれば、重賞レースを目標にしたほうがはるかに効率が良いのは明白です。
有馬記念のように1着の賞金が高額だとたとえ2着や3着だったとしても並の重賞レースクラスの賞金を獲得できます。
お金はいくらあっても困るものではないので、レース賞金が高額であるというのは、馬主にとっても騎手にとっても牧場にとっても極めて大きなメリットとなるのです。
勝利した馬は種牡馬や繁殖牝馬になれる
もうひとつの理由は馬主にとってだけではなく、出走する競走馬にとっても大きなメリットといえるのではないでしょうか。
重賞レース、特にG1レースに複数勝利するような競走馬となった場合、引退後は子孫を残すための「種牡馬」または「繁殖牝馬」としての人生を送ることになります。
種牡馬や繁殖牝馬は牧場にとってとても大切な存在であるため、引退後も最高の環境で過ごすことができるでしょう。
しかし、あまり良い成績を残せなかった競走馬の引退後についてはあまり知られていません。
一般的によく知られているのは「乗馬用」または「レース前の引率馬」としての活躍ですが、競走馬として登録される馬の数は中央地方合わせて毎年約7,000頭といわれています。
真相については分からないので何とも言えませんが、この7,000頭全てが果たして乗馬用の馬や引率馬として第二の人生を送ることができているとは思えません。
それを考慮すると、種付けや出産というのは競走馬自身にとっては負担ではあるものの、第二の人生が約束され、快適な環境で過ごすことができるというのは大きなメリットといえるでしょう。
馬主や牧場側にとっては、再び優秀な競走馬を育てることができたり、生まれた仔馬を他の牧場や馬主などに提供できるといったビジネス面でのメリットがとても大きいです。
競馬のレースの種類について
競馬のレースは大きく分けると5つのカテゴリに分けられます。
G1レースも多くがこのカテゴリのうちどれかに該当するので、知っておいて損はないでしょう。
新馬戦
ほとんどの競走馬が必ず一番最初に出走することになるのが「新馬戦」です。
JRAでは「メイクデビュー」という愛称をつけており、もしかするとこちらの方が馴染みが強いという人もいるかもしれません。
新馬戦は2022年より2歳時限定となっていて、2歳の6月からレースが始まり、3月中旬ごろに新馬戦がいったん終了、また6月から次の2歳馬の新馬戦が始まるといったスケジュールです。
未勝利戦
未勝利戦とは、名称通り1勝もできていない、つまり獲得賞金0円の競走馬たちによって争われるレースです。
2歳になって新馬戦に出走するも、惜しくも1着とならなかった場合、次のレースは「2歳未勝利戦」への出走になります。
それ以降、1勝するまではずっと未勝利戦のレースに出続けるということになります。
つまり1回も勝てていない競走馬は、まずこの「未勝利戦」に勝つことが最大の目標です。
また、調教がなかなかうまくいかず、デビューするのが3歳になってしまった競走馬たちも新馬戦ではなく、この未勝利戦でデビューすることになります。
限定戦
限定戦とは、競走馬の年齢や性別などの出走条件が設けられているレースです。
「2歳限定戦」「牝馬限定戦」「3歳限定戦」といったレースが限定戦の代表的なレースといえるでしょう。
後述するG1レースにも限定戦のカテゴリに含まれているものは数多くあり、たとえば「皐月賞」「日本ダービー」「菊花賞」のクラシック3冠と呼ばれるレースはすべて「3歳限定戦」です。
そのほか、3歳以上では勝利数による限定戦も存在していて、「1勝クラス」「2勝クラス」「3勝クラス」の3つが勝利数による限定戦で、この勝利数の競走馬のみ出走が許されているレースですが、この勝利数による限定戦は「条件戦」という名称となっていて、限定戦とは区別された扱いとなっています。
オープン戦
オープン戦は新馬戦や未勝利戦、そして条件戦を勝ち上がってきた競走馬すべてが出走できるレースとなっています。
2歳馬の場合は「新馬戦」に勝ち上がった競走馬はすべて「オープン戦」に出走することになりますが、3歳になると、先に開設したように「1勝クラス」や「2勝クラス」といった条件戦を経験し、3勝クラスのレースに勝利すると「限定戦」への出走が可能となります。
ちなみに条件戦を勝ち上がった競走馬がオープン戦に挑戦することを「格上挑戦」と呼んでいます。
オープン戦に出走できれば一定以上の実力を持っている競走馬であるといえるでしょう。
今回のテーマとなっている重賞レースはとにかくこのオープン戦に出走する条件を満たしていなければ登録することすらできません。
ハンデ戦
競走馬にはそれぞれ「斤量」が定められているのですが、ハンデ戦とはこの斤量を競走馬ごとに変えているレースの事を指します。
競走馬の能力というのは個々に違っていて、優秀な競走馬とそうではない競走馬とが同じレースに出走した場合、よほどの事が無ければ優秀な競走馬が勝利します。
しかしそれではレースとして面白くないため、斤量に差をつけることで人工的に実力を拮抗させ、レースを面白くしているのが「ハンデ戦」です。
重賞レースにもハンデ戦はいくつかあり、重賞のハンデ戦、特に牝馬限定戦の重賞ハンデ戦は毎回のように荒れるレースと言われています。
2022年のマーメイドステークスでは10番人気のウインマイティ―が1着となりました。
2着と3着は上位人気だったため、大荒れとはなりませんでしたが、それでも3連複は171.9倍、3連単は1166.8倍という高配当になっています。
競馬のレースのなかでも最高ランクに当たるのが重賞レース
そして、競馬のあらゆるレースの中で最高ランクに位置するのが重賞レースです。
この重賞レースに勝ち続けることは競走馬にとってはもちろんの事、競走馬を育て、育成している厩舎・生産者・馬主・調教師、さらにはレースで競走馬に騎乗することになる騎手と、競馬に関わるすべての人たちにとって最高の栄誉といえるでしょう。
重賞レースは3つのランクに分けられる
重賞レースは「G3」「G2」「G1」と3つのランクに分けられていて、Gのとなりの数字が小さくなればなるほど上位ランクとなっています。
ちなみに「G」とは「グレード」を略したものです。
中央競馬では毎週土日のレースのうち、必ず1レースはこの「重賞レース」が行われていて、基本的に日曜日または土曜日の第11レースが重賞レースに設定されています。
テレビで放送されている競馬中継の番組ではこの重賞レースをメインに番組が組まれていて、重賞レースでは各馬のパドックを紹介したり、返し馬の状況が放送されるなどしていて、これを見れば競走馬がどういった流れでレースに出走するのかを知ることができます。
ちなみに地方競馬にも重賞レースは存在しており、毎日どこかしらの競馬場で重賞レースが開催されています。
また、地方競馬の活性化を目的とした「交流重賞」という重賞レースもあり、交流重賞では地方競馬のレースに中央競馬の有力馬が参戦し、地方競走馬と中央競走馬の激突を見ることができます。
G3
G3レースはほぼ毎週どこかの競馬場で開催されている重賞レースで、レース数は2021年まで74レースでしたが、2022年に葵ステークスが正式にG3レースとなったため、75レースに増えました。
今後も昇格し、G3となるレースは出てくるかもしれません。
重賞レースは有力馬が出走するので穴馬も好走することが時にあるのですが、G3レースの場合1番人気の競走馬も絶対的な能力を持っているわけではないということもあり、特に穴馬の激走が多い印象です。
高配当を狙いたいのであれば、G3レースはオススメのレースのひとつといえるでしょう。
G2
G2レースはG3レースの約半分、年間39レース開催されます。
G2レースの開催時期というのはある程度偏りがある場合が多いです。
G2レースのいくつかはG1レースの「トライアルレース」に設定されていて、G1レース出走条件を満たしていない競走馬でも、このトライアルレースに設定されているG2レースに出走し、条件を満たす着順となれば優先的に出走権が与えられます。
したがって、G2レースは対象となるG1レースのだいたい1か月半ほど前にレースが開催されることが多いです。
例えば「菊花賞」のトライアルレースとなっているG2レース「セントライト記念」「神戸新聞杯」はそれぞれ9月の第3週と4週にレースが実施されます。
G2レースの中にはG1レースに出走するレベルの競走馬もそれまでの調教を試すためや、G1レースへの前哨戦として出走することもあり、そういったレースはある程度予想がしやすいでしょう。
ただし。「札幌記念」「毎日王冠」に関しては時にまるでG1レースと思ってしまうほど豪華メンバーになる事が多く、このふたつのレースは「スーパーG2レース」と呼ばれることがあります。
G1
中央競馬のレース数は年間3,000を軽く超えますが、そのなかでも最も高いグレードに位置するレースがG1レースです。
3,000以上ものレースのうち、G1レースはたった27レースしかありません。
「皐月賞」「日本ダービー」「菊花賞」のクラシック3冠をはじめ、人気投票の上位しか出走できない「宝塚記念」「有馬記念」、短距離王者を決めるレースである「高松宮記念」「スプリンターズステークス」など、どのレースも目玉レースばかりです。
2022年現在はコロナ禍であるため、入場者数を制限していますが、制限がない時期の「日本ダービー」や「有馬記念」の時は10万人を超える観客が競馬場を訪れていました。
G1レースは出走条件がとても厳しい
G1レースはすべての競走馬の最終目標であり、もっとも格式の高いレースということもあって出走条件が非常に厳しいです。
どのレースも一定の賞金を獲得していなければ登録すらできないですし、登録できたとしても、他の出走馬よりも賞金が少なければ落選してしまいます。
オープン戦だけではなくG3又はG2レースでも上位に入賞している経験が無ければ出走することは不可能といっても過言ではありません。
G1レースは競馬界の一大イベント
G1レースは競走馬や陣営にとって一世一代の大勝負ですが、競馬場を運営している側にとってもG1レースは一大イベントとなっています。
2022年現在は新型コロナウィルスの影響によって大々的なイベントは開催されていませんが、コロナ以前はトークショーがあったりするなど、競馬場内では様々なイベントが開催されていました。
レース観戦以外でも十分楽しめるので、初めて競馬場に訪れるのであればG1レース開催日がもっともおすすめです。
まとめ
中央競馬では年間約3,000以上のレースが開催されていますが、各レースは新馬戦や未勝利戦、限定戦やハンデ戦などさまざまなカテゴリに分類されています。
競走馬たちは2歳になるとまず「新馬戦」でデビューを果たし、勝利すると「2歳オープン戦」へ、敗北してしまうと勝利するまで「2歳未勝利戦」へと出走することになります。
2歳の時も3歳の時も、まずは勝利を重ねてオープン戦へ出走できるようになることを第一目標に、日々調教をし、レースへと出走しています。
そして、あらゆるレースの中でも最高峰に位置するのが重賞レースです。
重賞レースは何と言ってもほかのレースとは比べ物にならないほど賞金が高額になりますし、重賞レースを複数勝利した競走馬は種牡馬や繁殖牝馬として活躍できるなど、勝利することによるメリットはたくさんあります。
重賞レースは更にG3、G2、G1と3つに分かれていて、G1レースはすべての競走馬が最終目標としている最も格式の高いレースとなっています。
重賞レースは実力馬ばかりが集まるので白熱したレース展開となります。
特にG1レースではオグリキャップやトウカイテイオーの感動のラストランや、2020年ジャパンカップでの「アーモンドアイ」「コントレイル」「デアリングタクト」3冠馬3頭の激突など、後世に語り継がれるような数々の名勝負が繰り広げられてきました。
競馬場にとっても一大イベントということもあって、レース以外でもさまざまな催しが実施されます。
G1開催日は競馬場を初めて訪れるのに絶好のタイミングといっても良いでしょう。