【日本競馬の革命児】サンデーサイレンス系産駒の特徴は?代表産駒も紹介!
皆さんはサンデーサイレンスという競走馬をご存じでしょうか。
サンデーサイレンスはアメリカ生まれの競走馬で、引退後は日本に種牡馬として輸入し、瞬く間に活躍馬を輩出した名種牡馬です。
現在、ほとんどの競走馬がサンデーサイレンスの子孫であることを踏まえても、サンデーサイレンスの活躍ぶりが感じられます。
当記事では最初にサンデーサイレンスについて紹介したうえで、サンデーサイレンス系産駒の特徴や代表産駒をまとめています。
サンデーサイレンス産駒がどうして数多くいるのか、サンデーサイレンス産駒の特徴が気になる方はぜひ最後までご閲覧くださいませ。
そもそもサンデーサイレンスとは?
(引用元:JRA-VAN World)
サンデーサイレンスは1986年にアメリカで生まれた競走馬です。
デビューは1988年の10月のダート戦でした。
アメリカはダートレースが主流なのでダートデビューは特におかしいものではありません。
デビュー翌年にはアメリカ三冠のうちの二冠(ケンタッキーダービーとプリークネスステークス)を制しました。
右前脚の靭帯を痛めて引退しましたが、それまでにG1タイトルを6つ手にした名馬なのです。
しかし、サンデーサイレンスは引退後に真価を発揮しました。
引退後、アメリカで種牡馬入りする予定でしたが血統背景や恵まれない体格のためにアメリカでは種牡馬としての価値がありませんでした。
そこに目をつけたのが社台スタリオンステーションの創始者である吉田善哉氏です。
吉田善哉氏の目に止まったサンデーサイレンスは種牡馬として日本に輸入され、瞬く間に産駒が活躍するようになりました。
サンデーサイレンスの名前が日本で知れ渡っている背景には、過去に類を見ないほど産駒が活躍し、それまでの競馬界で活躍していた血統の概念を覆したからなのです。
サンデーサイレンスは2002年まで種牡馬として活躍しましたが、同年8月19日に衰弱性心不全のため亡くなりました。
サンデーサイレンスが大活躍した3つの理由とは
1990年にアメリカから輸入されたサンデーサイレンス。
輸入当初はそこまで注目されませんでしたが、初年度産駒からいきなりG1レースを手にする馬がでると、次々と活躍する馬が現れたのです。
どうしてサンデーサイレンスは活躍したのでしょうか?
また、サンデーサイレンス産駒はどうして初年度から結果を残したのでしょうか。
ここからはサンデーサイレンスが日本競馬界で大活躍した3つの理由を説明します。
産駒が次々と活躍した
サンデーサイレンスは初年度産駒からG1馬を輩出しています。
種牡馬入りした当初はそこまで期待されませんでしたが、社台ファーム総帥の吉田善哉氏の期待を上回る活躍を見せました。
ちなみに初年度産駒でG1タイトルを手にしたのは朝日杯3歳ステークスを制したフジキセキ、皐月賞馬ジェニュイン、ダービー馬のタヤスツヨシに宝塚記念勝ち馬のマーベラスサンデー。
牝馬もオークスとエリザベス女王杯を制したダンスパートナーがいます。
初年度産駒から5頭ものG1馬を輩出したのでした。
その後もサイレンススズカやステイゴールド、アドマイヤベガにスティルインラブ、晩年はハーツクライやディープインパクトを輩出しました。
種牡馬入りしてから引退までの12年間、すべての年でG1馬が出ているのが驚きですね。
サンデーサイレンス産駒は瞬発力に長けた馬が多く、スピードタイプの馬が多いです。
日本の馬場とサンデーサイレンス産駒の脚質が非常にマッチしたのでしょう。
瞬く間に日本競馬界を席巻したのでした。
配合の自由度が高かった
サンデーサイレンスの祖先は欧米で活躍した馬です。
そのため、日本に輸入された時点でインブリードになることはありませんでした。
近親交配ともいいます。
1990年代、日本で活躍していた馬はノーザンダンサー系の馬やターントゥ系の馬です。
周りに近親血統がいなかったため、サンデーサイレンスは当時の有力牝馬との交配が行いやすかったのです。
競走馬は親の特徴を受け継ぎやすい生き物といわれています。
両親が強い馬だったら仔も親の能力を引き継ぎやすいのです。
サンデーサイレンスは現役時代に活躍した牝馬と交配することで、潜在能力を秘めた産駒を多数輩出することができたのでした。
後傾種牡馬にも恵まれた
サンデーサイレンスが恵まれているもう一つの点は後傾種牡馬に恵まれたことです。
サンデーサイレンスは2002年に死亡しましたが、晩年に誕生したディープインパクトはシンボリルドルフ以来、日本競馬史上2頭目の無敗の三冠馬になったのです。
ディープインパクト以前はスペシャルウィークやアグネスタキオンあたりが後継種牡馬として活躍しました。
しかし、ディープインパクトの活躍ぶりは競馬に興味のない一般人にも広まり、ディープインパクトこそポストサンデーサイレンスとして注目されたのです。
ディープインパクトは種牡馬としての価値を見込まれ、4歳の有馬記念を最後に現役を引退することになりました。
そして、種牡馬入りしてからはポストサンデーサイレンスとしてたくさんの牝馬と交配。
そして、ディープインパクトの仔は瞬く間にターフで活躍したのです。
ディープインパクトこそポストサンデーサイレンスとして注目されていますが、それ以外にもステイゴールドもオルフェーヴルやゴールドシップといった名馬を輩出しています。
国内でディープインパクトに土をつけたハーツクライも種牡馬入りしてリスグラシューやドウデュースらをターフに送り込みました。
サンデーサイレンスは後傾種牡馬にも恵まれており、その血が途絶えることは当分ないでしょう。
サンデーサイレンス系産駒の特徴
日本競馬で大活躍したサンデーサイレンス産駒。
サンデーサイレンス産駒はこれまでの血統概念を覆す活躍を見せ、気が付けばサンデーサイレンスの仔ばかりになりました。
サンデーサイレンス産駒の強さの根源は何でしょうか。
ここからは、サンデーサイレンス産駒の特徴について紹介します。
スピード能力の高い馬が多い
サンデーサイレンス産駒の特徴でもっとも目を引くのがスピード力の高さです。
競馬はレース競技なので勝つためには当然スピードの速い馬のほうがよいです。
サンデーサイレンス産駒は瞬発力に加速力、最高速度などスピードを高めるうえで必要な要素を持つ馬がたくさんいたのです。
例えばディープインパクトは新馬戦ですでに上がり最速33秒1の末脚を使っていました。
それ以外にも1999年の天皇賞(秋)でレコード勝ちを収めたスペシャルウィークやハイペースの逃げで逃亡者の異名が付けられたサイレンススズカなど、スピード力に長けた馬が多いですね。
さらに注目したいのがサンデーサイレンス産駒がいずれも日本の馬場とマッチした点です。
サンデーサイレンス自身はダートが主流のアメリカ生まれなので芝適性は未知数でした。
しかし、産駒が日本の芝で活躍したのです。
ダートよりも活躍馬が多いのも面白いですね。
もしもサンデーサイレンスが日本の芝レースに出走していたら思わぬ活躍を見てたかもしれません。
芝のマイルから長距離まで、幅広く活躍している
サンデーサイレンス産駒はマイルから中距離、さらには長距離まで幅広い距離で活躍馬がでています。
競走馬は親の特徴を引き継ぎやすいので、例えば現役時代に短距離レースで活躍した親の仔は短距離適性は高い反面、中・長距離を苦手とする馬もいます。
しかし、サンデーサイレンスはダイワメジャーやフジキセキなどのマイルG1馬や数多くの中距離馬、さらにはスズカマンボやディープインパクト、エアシャカールは長距離G1を手にしています。
距離問わず数多くの舞台で活躍している馬がいるのもサンデーサイレンス産駒の特徴といえるでしょう。
なお、短距離レースに関してはそこまで目立った馬がいないように思いますが、アドマイヤマックスやオレハマッテルゼ、ビリーブにスズカフェニックスが高松宮記念を制しています。
ビリーブに至ってはスプリンターズステークスも制していました。
短距離でも活躍している産駒がいることから、どんな距離でも対応できるオールラウンダーを輩出していました。
余談ですが、サンデーサイレンス産駒でダートG1を手にしたのはゴールドアリュールのみです。
サンデーサイレンス自身はダートG1を手にしていましたが、産駒で活躍傾向が少ないのは珍しいケースですね。
非サンデーサイレンス系の馬との相性もばっちり!
サンデーサイレンス産駒の強みは競走馬引退後にも現れます。
非サンデーサイレンス系の馬と交配すると、優秀な仔が生まれやすかったのです。
そもそも競走馬は血統背景が近い馬と交配すると、能力が低かったり虚弱体質の馬が産まれやすいです。
そのため、極端に血統濃度の近い馬よりも、近親がいない組み合わせ、もしくは血統濃度の低い交配が大事になってきます。
しかし、サンデーサイレンスの活躍を見て多くの生産者がサンデーサイレンスと交配したことでサンデーサイレンス系の馬が多くなり、競走馬引退後の使い道に苦心したのです。
しかしながら、サンデーサイレンス系の馬は非サンデーサイレンス系の馬と交配すると強い馬が産まれやすく、サンデーサイレンス×非サンデーサイレンス系の交配で数多くの馬が活躍しました。
特に、非サンデーサイレンス系の馬で代表的なキングカメハメハ系の産駒と交配すると強い馬が多数生まれました。
キングカメハメハ×サンデーサイレンスの組み合わせの有名な馬といったら二冠馬ドゥラメンテやエアスピネルがいます。
もしも、この時期にキングカメハメハがいなければいよいよサンデーサイレンス系の馬で競馬界は飽和し、現在とは全く違った馬が活躍していたことでしょう。
非サンデーサイレンス系の馬との交配でより強い馬が生まれるのもサンデーサイレンス系産駒の特徴なのです。
こんなに多い!サンデーサイレンスの代表産駒一覧!
サンデーサイレンスは12年にもわたって種牡馬として活躍していました。
その間数多くの牝馬と交配し、多くの産駒がターフデビューを果たし、さらには毎年G1タイトルを手にした馬がいます。
代表的なサンデーサイレンス産駒を年度ごとに表でまとめました。
年度 | 代表産駒 | 主な勝利レース |
1992年産 | フジキセキ | 朝日杯3歳ステークス |
1993年産 | バブルガムフェロー | 天皇賞(秋) |
1994年産 | サイレンススズカ | 宝塚記念 |
1995年産 | スペシャルウィーク | ダービー・天皇賞(春・秋) |
1996年産 | アドマイヤベガ | ダービー |
1997年産 | エアシャカール | 皐月賞・菊花賞 |
1998年産 | アグネスタキオン | 皐月賞 |
1999年産 | ゴールドアリュール | フェブラリーステークス・東京大賞典などダートG1を5勝 |
2000年産 | スティルインラブ | 桜花賞・オークス・秋華賞 |
2001年産 | ハーツクライ | 有馬記念 |
2002年産 | ディープインパクト | クラシック三冠などG1レースを7勝 |
2003年産 | フサイチパンドラ | エリザベス女王杯 |
代表的なサンデーサイレンスの後傾種牡馬5頭
サンデーサイレンスは2002年に数多くの産駒を残してこの世を去りました。
しかし、サンデーサイレンスの意思を継いだ馬は現在も種牡馬、もしくはターフで活躍しています。
サンデーサイレンスの後継種牡馬として活躍した馬を5頭紹介します。
【近代競馬の結晶】ディープインパクト
ディープインパクトはサンデーサイレンスが種牡馬として活躍した晩年に誕生した馬です。
馬体重440キロの小柄な馬でしたが、デビューから引退レースまで手綱を握った武豊騎手をして、「飛ぶようにして走る」といわせた名馬です。
デビュー戦から上がり最速33秒1の末脚で勝利をつかむと、若駒ステークスはもったまま楽勝。その勢いで皐月賞とダービーも制します。
最後の一冠を賭けた菊花賞は単勝の売上が80%を超えて、オッズ1.0倍の元払いになるほどでした。
古馬になってからも天皇賞(春)や有馬記念を制し、4歳末の段階ですでにG1タイトルを7つ手にしました。
その後も活躍できましたが、サンデーサイレンスの後継種牡馬として4歳末で引退したのです。
引退後は種牡馬入りし、数多くの名品と交配しました。
産駒も父同様末脚勝負を得意とする馬が多く、ダービー馬だけでも7頭輩出。
その中のコントレイルは父ディープインパクト同様無敗でクラシック三冠を制しました。
また、牝馬ではジェンティルドンナがG1タイトルを7つ手にしています。
競走馬としてだけではなく、種牡馬としても活躍しましたが2019年の夏に頸椎の骨折のため死去しました。
【晩成型】ハーツクライ
ハーツクライは現役時代にG1タイトルを2つ手にしています。
たったのふたつですが、そのうちのひとつは2005年の有馬記念で、国内で唯一ディープインパクトに先着した馬として高く評価されました。
種牡馬としても、世界リーディング1位に君臨したジャスタウェイをはじめ、ジャパンカップ勝ち馬のスワーヴリチャードや東西グランプリレースを制したリスグラシュー、ダービー馬のドウデュースを輩出しています。
産駒は古馬になってから覚醒する馬が多く、リスグラシューやシュヴァルグランはまさにその典型でした。
しかし、ドウデュースやヌーヴォレコルトのように3歳の時点でG1タイトルを手にした馬もいて、幅広く活躍しているのです。
【丈夫さがウリ】ステイゴールド
サイレンススズカの同期であるステイゴールドは7歳暮れまで活躍しました。
主なG1タイトルは香港ヴァーズのみですが、50戦して常に上位争いを繰り広げ、また、大きな怪我もなく引退したことで多くの競馬ファンに好まれた名馬なのです。
引退後は種牡馬入りし、三冠馬のオルフェーヴルやゴールドシップを輩出しました。
ステイゴールド自身が気性難として有名ですが、オルフェーヴルやゴールドシップも気性難の血が継がれ、その暴れん坊ぶりがかえって多くのファンに愛されたのです。
産駒の特徴は、父同様丈夫な馬が多いことです。
また、スタミナやパワーに定評のある馬も多く、オルフェーヴルもゴールドシップは長距離レースの菊花賞を制しました。
ステイゴールドは晩年まで種牡馬として活躍しましたが、2015年に大動脈破裂のために死去しました。
【マイルまでの距離に強い】ダイワメジャー
ダイワメジャーは現役時代にG1タイトルを5つ手にしました。
そのG1タイトルのうちの4つがマイルレースだったため、サンデーサイレンス産駒最高のマイラーといえるでしょう。
種牡馬入りしてからも数多くの産駒がデビューしましたが、ほとんどの馬が短距離やマイルを得意としています。
その反面、芝2,000m以上の中距離レースではG1馬がおらず、得意不得意がはっきりしている産駒なのです。
マイル以下では勝ち負けを繰り返していますが、中距離以上では凡走しているため血統予想しやすい種牡馬といえるでしょう。
【ダート馬を輩出】ゴールドアリュール
ゴールドアリュールはサンデーサイレンス産駒唯一ダートG1レースを制した馬です。
引退レースとなった帝王賞は11着に敗れてしまいましたが、それまでのダートにおける活躍から、ダート界で活躍するサンデーサイレンス産駒の活躍が見込まれ、種牡馬入りしました。
種牡馬入りしてからはエスポワールシチーやコパノリッキー、ゴールドドリームにクリソベリルなどがダートで活躍しています。
芝のG1馬は長く現れませんでしたが、2022年の高松宮記念では重馬場の中、力のある走りを見せたナランフレグが勝利し、ゴールドアリュール産駒初の芝G1馬が誕生しました。
まとめ
アメリカ生まれでダートG1タイトルを6つ手にしたサンデーサイレンスは吉田善弥氏の目にとどまり、日本に輸入されました。
輸入後は瞬く間にG1馬を輩出し、気が付けばサンデーサイレンス産駒が大活躍するに至ったのです。
後継種牡馬にも恵まれたサンデーサイレンスの血はディープインパクトやハーツクライがつないでいます。
現在はサンデーサイレンスの孫、もしくはひ孫がターフで活躍しています。
サンデーサイレンスの血を継いだ馬は今後も競馬界を賑わすでしょう。