競馬の返し馬の見方は?事前予想を変更するのはこんな時
競馬初心者の皆さんは返し馬を見たことがあるでしょうか?
パドックは大事だとよく言われて見ているかもしれませんが、返し馬まではどうでしょう。
この記事は競馬の返し馬の見方について解説します。
返し馬とは、馬がパドック周回の後に馬場に出て走るウォーミングアップのことです。
レースに出る馬の多くは、パドックで最後の周回前に騎手が騎乗します。
その後地下馬道と呼ばれるスタンド下の道を抜けて、馬場に到着し返し馬を始めるのです。
この時に馬は様々な動きを見せるのですが、どのようなものが良い動きなのか初めはよく分かりません。
そこでどのような返し馬が良いのかを、いろいろなケースを例にして紹介します。
返し馬によって自分の予想を変えなければならない場合もあるので、馬の状態をしっかりと見極めることが大事なのです。
返し馬は何を見るか?
返し馬はどんなことに注意して、何を見ればいいのでしょうか。
馬が馬場に入場してくる時は、誘導馬を先頭に基本的には馬番号順にやってきます。
そしてゆっくり歩く誘導馬についていったり、または全く逆方向に走り出したりとそれぞれの返し馬を始めます。
返し馬では何を見たらいいのかは難しいところですが、私達人間が何かのスポーツを始める前のウォーミングアップを考えたらある程度わかるのではないでしょうか。
私達がスポーツを始める前は、ゆっくりと体をほぐし、軽い運動から始めますよね。
いきなり全力で走るようなことはしないで、徐々に体を慣らしていくと思います。
競争馬の返し馬もそれと同じことが言えて、徐々にスピードを上げていくようなものが良いとされています。
では次に良いとされる返し馬の詳細を紹介します。
スムーズな動き
良い返し馬の例として、一連の動きがスムーズなことが挙げられます。
まずは落ち着いた状態で馬場に入り、ゆっくりとした常歩(なみあし)で進みます。
その後ゆっくり走る速歩(はやあし)になりますが、この走りはトットットッという感じのリズムです。
このまま速歩で返し馬を終える場合もありますが、多くはその後に駈歩(かけあし)になります。
駈歩とは軽く走った状態のことです。
この常歩→速歩→駈歩の流れがスムーズな時、多くの場合で競走馬の精神状態は良好と言えます。
そんなときの競走馬は、自分の能力の100%に近いものを出せると考えられています。
騎手との一体感
次に返し馬で重要なのは騎手との一体感です。
競馬は馬7対騎手3とよく言われています。
これはレースで重要な比率なのですが、馬の能力だけでは競馬は勝てません。
騎手が上手に馬をエスコートするからこそ、1着でゴールできるのです。
そんなことから騎手と馬の一体感があるような時は、好走する可能性が高いと考えられています。
一体感があれば先ほどの駈歩までの動きがスムーズで、また馬を止める時もピタっと止まります。
テレビを見ていると、向こう正面まで走っていった馬がピタっと止まっている姿が映されることがあります。
騎手はあえて馬を止めて、コミュニケーションを図っているのだと思われます。
その時は西日を浴びた騎手と馬がとてもきれいなのですが、このような場合もレースでは好走することが多い印象です。
馬7対騎手3の比率がうまく絡み、能力を出し切れているからなのだと思います。
返し馬とパドックの関係
返し馬とパドックの関係はとても重要です。
特にパドックでその馬らしからぬテンションだった時は、返し馬をよく見るように言われています。
普段はおとなしい馬なのにパドックでは入れ込んでいたとか、逆に元気のいい馬がおとなしかったような場合です。
それぞれどのような点を注意したらいいのかを紹介します。
パドックで入れ込んでいた場合
パドックで入れ込んでいた馬の返し馬は、スムーズさを注意して見ます。
入れ込んだ状態のまま馬場に入り、そのまま全速力で逆方向に走っていく場合は、評価を見直すことも必要です。
特に普段おとなしい馬がそうなった時は、あきらかにおかしいので評価を1枚下げて馬券購入を再検討するようにしましょう。
またそのような返し馬がいつも通りの馬の場合は、問題なしと判断していいと思います。
パドックでおとなしかった場合
パドックでおとなしかった馬の返し馬は、騎手との一体感を重視します。
普段からおとなしい馬なら問題ないのですが、元気いっぱいの馬がおとなしいと心配です。
そんな時に騎手は、あえて積極的な返し馬をして馬に気合を入れます。
そうしてレースに向かうモチベーションを上げていくのです。
騎手が積極的に動かそうとした時に、馬が素直に動いてくれたらあまり問題はありません。
しかし一体感がなく、だらしない走りをしていたら評価を下げるのがいいでしょう。
このようにパドックでいつもと違う動きをしていたら、いつも以上に返し馬をしっかり見ることをおすすめします。
通常とは異なる返し馬
馬は生き物ですから、人間の組んだ予定通りにいかない事も多くあります。
臆病な性質を持っているところに、レースという特殊な状況に向かうのですから尚更ですね。
馬がいつもの状態にない場合、通常とは異なる返し馬をすることがあります。
そんな返し馬のいくつかを紹介します。
先出し
パドックで入れ込んでいて、通常通りに返し馬に向かうと事故に繋がる可能性がある場合にその馬を先出しします。
その際はパドックで騎手は騎乗命令がかかる前に、地下馬道へ続く入口で待機しています。
通常は騎乗命令→騎乗→パドックを1周してから地下馬道に行きますが、先出しの馬はパドックを1周することなく、先に地下馬道へ入っていきます。
先出しは他馬との接触を避け、事故を防ぐために有効な手段ですね。
しかし難しいのは先出ししたからといって、馬券の対象外かというとそうでもないことです。
その時は馬の能力とのバランスを見て、総合的に判断するようにしましょう。
カニ歩き
馬場に入ってから走り出さずに、カニのように斜めに歩いている馬がいます。
カニ歩き(走り)は、馬のテンションが上がり過ぎないように落ち着かせている状態の時に見られます。
カニ歩きの時の馬は、全力で走りたそうな素振りをみせています。
それを騎手が前を向かせずに抑えて、斜め方向に馬を導くのです。
そのようにしてカニ歩きで落ち着いてきた馬は、駈歩に移り返し馬を続けます。
一方テンションが高いままの馬は、カニ歩きのまま返し馬を終わらせることもあります。
まったくしない
馬場に入っても返し馬を行わない馬がいます。
返し馬をまったくしないのは、馬がテンションが高すぎるため落ち着かせることを重視した場合です。
返し馬はウオーミングアップなので、やらないよりはやった方がいいと思います。
ところがテンションが高い馬が返し馬をやると、一気に走り過ぎてレース前に体力を消耗してしまう危険があるのです。
そのため騎手は苦渋の決断として、返し馬をやらないという判断をするようです。
返し馬も奥が深いですね。
距離別の返し馬チェックポイント
レースの距離別にどんな返し馬が理想なのかを見ていきます。
1200mを全力で走る場合と、3200mをペースを考えながら走る場合では返し馬のやり方も違ってきます。
短距離・中距離・長距離に分けて、それぞれの返し馬を確認します。
短距離の場合
1200mほどの短距離の場合の返し馬は、早めに駈歩に移行できた馬が良いと考えられます。
短距離はスタートを決め、一気にトップスピードにしてそれをゴールまで持続する必要があります。
そのため返し馬では、駈歩に早く移ってある程度高いテンションでレースを迎えた方が有利です。
また入れ込んでいる馬はスタートで出遅れる場合もありますが、うまくスタートをきれるとそのままゴールまで流れ込む可能性もあります。
そんなことから入れ込んだ馬にさせる、先出しやカニ歩きの場合でも油断はできません。
特に小回りコースの多い地方競馬では、このような馬があっさり勝ってしまうこともあるので注意しましょう。
中距離の場合
スピードもスタミナも必要な中距離の場合の返し馬は、オーソドックスな形の馬が好走すると考えられます。
スムーズに折り合えていて、騎手との一体感もある返し馬が理想です。
おとなしすぎても、テンションが高過ぎてもあまり良い返し馬とはいえません。
ゆったりと構えながらも鋭く駈歩に移れる馬は、自身の能力を全開に近いところまで出せるのではないかと思います。
長距離の場合
スタミナと瞬発力が必要な長距離の返し馬は、騎手との一体感を最も大事にします。
3200mも走るとレースは3分を超えてきます。
勝つためには上手く折り合って力を貯め、最後の直線で残った力を爆発させることが必要です。
騎手と馬に一体感があれば、長い道中も体力を消耗することなくゆっくりと進めます。
そんなことから、返し馬でカニ歩きやまったくしない馬はスタミナ切れになる場合があるので、馬券は考え直した方がいいかもしれませんね。
返し馬で予想を変更するケース
返し馬で予想の変更が必要なケースを紹介します。
競馬の予想で重要なのは、馬の絶対能力の優劣だといわれています。
パドックや返し馬の直前情報は、それを補うものでそれによって予想を変える必要はないと考えられているのです。
しかし馬の様子がいつもとはあきらかに違っていて能力を出し切れないという時には、おもいきって予想を変更する必要があるのではないでしょうか。
そのような2つのケースについて紹介します。
あきらかに動きがおかしい
返し馬で予想を変更するケースの一つ目は、あきらかに動きがおかしい時です。
プロではないと分からない微妙な動きの違いもありますが、ずっとその馬を追いかけているとなんか違うなと感じることがあります。
2023年の天皇賞・春のタイトルホルダーはこれに当てはまります。
1番人気に支持されながら、3〜4コーナー途中で競争を中止してしまったのです。
テレビ解説をしていた元騎手の安藤勝己さんは、「横山和生騎手が丹念に馬をほぐしているところが気になる」と返し馬の段階でタイトルホルダーの異変に気付いていました。
そして実際にこの時のタイトルホルダーは、平場のレースだったら出走させないほどの状態だったようです。
どれだけ能力があったとしても、そのような状態でGⅠレースを勝つことは難しいですね。
こんな時はおもいきって馬券から外してしまう勇気が必要だと思います。
馬のタイプと違う
返し馬で予想を変更するケースの二つ目は、馬のタイプと違う場合です。
普段はパドックでチャカチャカしている馬がおとなしく、返し馬でも元気なく走っているような時です。
このような時は疲れが抜けていなかったり、輸送で体力を消耗している場合があります。
馬券対象から外すのかどうかは難しいですが、評価は下げた方がいいと思います。
逆に普段おとなしい馬が、妙なハイテンションになっている時も注意が必要です。
何かに怯えていたりしている可能性があります。
そんな時は発走前に体力を消耗してしまうので、長距離戦だったら馬券から外すことも考えた方がいいでしょう。
返し馬が参考にならないツインターボ
(引用元:JRA-VAN)
ここまで返し馬の見方を紹介してきましたが、何事にも例外があるように返し馬の常識にも例外があります。
ツインターボは返し馬の常識が通用しない1頭で、30年も経過した2023年になってもそれは語り継がれています。
1993年産経賞オールカマーの時の返し馬の映像を見ると、まるでレースで走っているようです。
管理する笹倉調教師は「ツインターボは返し馬とレースの区別がついていなかった」と言っています。
そして返し馬で3ハロン33秒台のような全力疾走を見せておきながら、本番のレースでも逃げ切ってしまったのです。
普通はあのような返し馬をしたらレースでは必ずバテると思うのですが、ツインターボは違いました。
ツインターボは予想しずらい馬ではありましたが、2023年の今でも人気があるのはとても嬉しいです。
まとめ
この記事は競馬の返し馬の見方について解説してきました。
この記事をまとめると次のようになります。
・返し馬で大事なのはスムーズな動きと騎手との一体感
・パドックで入れ込んでいたり、落ち着きすぎている時は返し馬が重要
・先出し・カニ歩きなどの通常と異なる返し馬がある
・レースの距離別に返し馬のチェックポイントが違う
・返し馬であきらかに動きがおかしい場合は予想を変更する
・ツインターボは返し馬の常識が通用しない1頭
馬券購入の最終チェックポイントとなる返し馬はとても重要ですが、その見方はなかなか難しいですね。
それは馬それぞれに個性や特徴があり、どの返し馬が良いとははっきりと言えないからです。
しかしいつも見ている馬なら、ちょっとした変化にも気付くと思います。
そのようなお手馬ともいうべき馬を多く作っていくのが、馬券を当てる近道なのではないでしょうか。
パドックから返し馬の直前情報をしっかり確認して、納得のいく馬券を購入していきましょう。