クロフネ産駒とは?特徴や代表的な競走馬を紹介!

クロフネ産駒とは?特徴や代表的な競走馬を紹介!

競馬新聞を読んだり、競馬のレースを観ていると、「○○産駒」という単語を聞いたり、見たりすることが多いです。

競馬初心者にとっては、この言葉が何を意味するのか分からないかもしれませんが、競走馬の特徴や能力を知る上で「○○産駒」は非常に重要な情報となります。
したがって、競馬を長く楽しむつもりであれば、この言葉を覚えておくことをお勧めします。

本記事では「クロフネ産駒」について、親馬であるクロフネとはどのような競走馬だったのか、そしてクロフネ産駒にどのような特徴があるのかを解説します。
更にクロフネ産駒の中でも突出した活躍をした競走馬についても紹介していきます。

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競馬は、「ブラッドスポーツ」とも呼ばれるように、血統が非常に重要なスポーツです。
競走馬が誕生するには、父馬と母馬が必ず必要であり、誕生した仔馬は父馬や母馬の特徴を少なからず受け継いでいます。

つまり、父馬や母馬の特徴を知っておけば、その仔馬の特徴もある程度把握することができるため、競走馬たちがはじめてレースを経験することとなる「新馬戦」であっても予想することができるというわけです。
しかし、時には「突然変異」と言ってもよいような馬が誕生することがあります。

父馬や母馬がまったく活躍できなかった距離で活躍したり、父馬や母馬が先行馬だったのに後方から凄まじい末脚を披露する競走馬が誕生したりすることがあるのです。
そういったイレギュラーが発生することが、血統の面白さであり、難しさでもあります。

クロフネとはどんな競走馬だった?

クロフネ2000年ラジオたんぱ3歳ステークス(引用元:3分でわかった気になる名馬 JRA)

クロフネはアメリカで誕生し、日本で調教を受けた「外国産馬」でした。
現在では外国産馬が出走できるレースがかなり多くなってきていますが、当時は皐月賞をはじめとしたクラシックレースに出走できないのをはじめ、日本国内のG1レースで外国産馬が出走できるレースはかなり限定されていました。

しかし日本競馬最高峰のレースのひとつである「日本ダービー」が2001年に外国産馬も出走できるように制度が変更される予定であり、金子真人オーナーは「解放初年度のダービーを勝ってほしい」という願いも込めて、かつて浦賀沖に突如現れて当時の日本人に大きな衝撃を与えた「黒船」になぞらえて「クロフネ」と名づけられました。

2000年10月14日、京都競馬場の新馬戦でデビューしますが、この時のレースでは窮屈なところに入って抜け出せなくなってしまい、2着に甘んじてしまいます。

しかし続く未勝利戦をレコードタイムを1秒以上縮めるという圧巻のパフォーマンスで勝利、続くエリカ賞もレコード勝利を挙げ、次のレースをラジオたんば賞3歳ステークス(現ホープフルステークス)に定めます。

このレースには後に幻の3冠馬と呼ばれるアグネスタキオンとG1レースを2勝するジャングルポケットが出走していましたが、クロフネはダントツの1番人気に推されています。

ところがこのレースでは前走までのような直線の伸びが見られず、直線では逆にアグネスタキオンに交わされたばかりか一度下がったジャングルポケットにも抜かれてしまい、3着という結果で終わっています。
レース後脚部の故障が発覚し、この年はこのレースを最後に休養することとなりました。

3歳初戦は「毎日杯」から始動、このレースでは終始危なげないレース運びで、終わってみれば2位に5馬身差、3着にはさらに馬身差をつけることとなり、圧勝で重賞初制覇を達成しました。

しかしあくまでもクロフネの最終目標はダービーであり、ダービーへの出場を確実にするためにはトライアルレースなどで好成績を残す必要があったため、日本ダービーを迎えるまでに「京都新聞杯」または「青葉賞」で優勝するか、「NHKマイルカップ」で2着以内に入る必要がありました。

日本ダービーの前哨戦として走るのであれば、「京都新聞杯」か「青葉翔」が妥当なのですが、陣営が選んだのはなんと「NHKマイルカップ」でした。

これは「東京競馬場に慣れさせるため」「G1レースを経験させるため」といった理由の日かに、「皐月賞を勝ったアグネスタキオンとNHKマイルカップを持っているクロフネが対決すればダービーが盛り上がるだろう」という思惑もあったのですが、アグネスタキオンは残念ながら故障によりダービーを走ることなく引退しています。

NHKマイルカップではほぼ最後方からのレースを強いられましたが、このレースからコンビを組むことになった武豊騎手が鞭を入れると凄まじいスピードで前をごぼう抜きし、見事G1レース初勝利を達成しました。

そしていよいよ3歳時の最終目標であるダービーに出走、当日は2番人気とファンの期待を大いに集めましたが、いつもの勢いがみられないまま5着と惨敗してしまったのです。

夏の休養を経て秋は「天皇賞秋」出走を目標に神戸新聞杯に出走しましたが、長期休養明けでレース勘を取り戻せていなかったのか、3着に敗れてしまいます。

さらに「天皇賞秋」も2頭の外国産馬出走枠がメイショウドトウとアグネスデジタルが出走を表明したため埋まってしまい、クロフネに天皇賞秋を出走するチャンスはゼロになってしまいました。

そこで陣営は思い切ってダート路線に進むことを決意、手始めに「武蔵野ステークス」へ出走させることにしました。
ところがこの武蔵野ステークスでクロフネは2位に9馬身差、従来のタイムを1秒以上縮める圧巻の走りを見せ、ファンを大いに驚かせました。

その勢いのまま「ジャパンカップダート」(現チャンピオンズカップ)に出走したクロフネはこのレースでも他の馬を寄せ付けない走りを披露、2位に7馬身差をつけただけではなく、またも従来のタイムを1秒以上縮めるという快挙を成し遂げ、見事にG1レース2勝目を達成します。

しかしレコードタイムを更新するような走りを2度続けてしまったことが影響したのか、年末に屈腱炎を発症していたことが発覚、後に正式に引退することが決定し、クロフネは種牡馬入りすることとなりました。
松田国栄調教師は、後にクロフネの引退について以下のように語っています。

「人を殺したわけじゃないけど、私の中ではそれと同じくらい、『大変なことをしてしまった』という思いが強かった。
毎日の調教を私が指示して、確認して。
その繰り返しの中で起こった故障ですから。
 
マツクニという人間は馬の世界しか知りません。
そんな自分が自信を持ってやったことが、まるで否定されたかのようで……。
 
クロフネはGIをふたつ勝ちました。
レコードタイムも4度マークしました。
 
けど、その勲章と、屈腱炎とを天秤にかけたら、はるかに屈腱炎の方が重いんです。
たとえダービーを勝っていても、同じ気持ちになっていたと思います」

競走馬としての活躍期間は非常に短かったのですが、G1レースを2勝、そして4度のレコードタイム更新と、鮮烈な印象をファンに残しました。
特にダートレース2戦の勝ちっぷりは他の競走馬とは一線を画するものであり、未だにダートに限定すればクロフネは史上最強馬の1頭として必ず名前が挙がります。

クロフネ産駒の特徴

クロフネ産駒の特徴

クロフネ産駒はクロフネ自体が2021年に亡くなってしまっているため、直接の仔馬がデビューする事はもうありませんが、クロフネの血を引く競走馬たちはこれからも続々とデビューしてくる事でしょう。
本項目ではクロフネ産駒の競走馬たちに見られる共通点について解説します。

芝・ダートともに活躍馬を輩出

クロフネ産駒の特徴として、クロフネ自身が芝・ダートレースのG1レースを制しているという点を受け継いだのか、芝コースでもタートコースでも活躍する競走馬を輩出しています。

芝コースではG1レースを複数優勝する競走馬を輩出していますし、中央競馬のダートレースを制した産駒はまだ現れていませんが、地方競馬の重賞レースを複数勝利するような競走馬は数多く誕生しています。

適性距離は中距離まで

距離に関する特徴で言えば、大部分の競走馬が短距離、又はマイルレースで勝ち星を重ねています。
一方で中距離以上のレースになると、目立った活躍を見せた競走馬はほとんど居ません。
クロフネ産駒は短距離又はマイルまでの距離で買うべき競走馬だと言えるでしょう。

休み明けよりも2戦、3戦後に本調子になる

長期休み明けの初戦はあまり好走しない傾向にあります。
2戦目くらいから調子を戻してくるため、ある程度叩いて本調子になる傾向にあると言えるでしょう。

とはいえ、あくまでも傾向があるというだけであり、走る馬は長期休み明けでもしっかり走ってくれます。
その馬の過去の成績を見て、休み明けは走るのかどうかを判断しましょう。

クロフネ産駒の代表馬

クロフネ産駒の代表馬

クロフネ産駒で活躍した競走馬を本項目では4頭紹介します。
アップトゥデイトは障害レースで活躍しましたが、それ以外の3頭はマイル又は短距離と、クロフネ産駒の特徴でも解説したように瞬発力が問われる短い距離のレースでの活躍が目立ちます。

フサイチリシャール

フサイチリシャールは、クロフネ産駒で初めてG1レースを勝利した競走馬です。
新馬戦こそ敗北を喫すものの、未勝利戦、オープン戦、そして重賞レースである東スポ杯2歳ステークスを全て逃げ切って勝利、怒涛の3連勝で2歳限定G1レースのひとつ、「朝日杯フューチリティーステークス」に出走、このレースではスタートで出遅れて2番手を追走する形になりましたが、残り400メートルで先頭に立つとそのまま押し切り、見事にG1レース初制覇を達成しました。

2歳時は敵なしの活躍を見せましたが、3歳になると状況が一変、クラシックレースでは制裁を欠く形となり、短距離路線に転向して「阪神カップ」では久しぶりの勝利を手にするものの、それが最後の勝ち星となりました。
引退後は種牡馬から乗馬へと用途が変わりつつ余生を送っています。

カレンチャン

カレンチャン(引用元:JRA-VAN)

カレンチャンは高松宮記念とスプリンターズステークスを制し、現役時代は短距離界を牽引する一頭でした。
デビュー戦と2戦目はダートレースでの出走でしたが、3戦目以降は芝コースでの出走となっています。

3歳時は重賞レースにおいては決定力に欠いており、活躍できませんでしたが、4歳の時に阪神牝馬ステークスを勝利して重賞初制覇を達成、その後函館スプリントステークス、キーンランドカップを連勝、更に秋になってG1レース初出走となったスプリンターズステークスでは2位を1馬身差以上突き放して快勝、見事G1ホースとなりました。

翌年は春の高松宮記念に出走すると直線で抜け出してそのまま押し切り、G1レース2勝目を飾りました。
牝馬の春秋スプリントG1制覇は当時史上3頭目という偉業でもあります。

その後連覇がかかったスプリンターズステークスですが、短距離最強の一角であるロードカナロアも出走しており、果敢に挑むも流石に届かず2着となります。

引退レースの香港スプリントでも出遅れが響いてか7着と奮わぬ結果に終わりました。
引退後は繁殖牝馬となっています。

アップトゥデイト

アップトゥデイト(引用元:youtube)

アップトゥデイトは主に障害路線で活躍した競走馬です。
中京競馬場でデビューし、デビュー戦を勝利、3戦目も勝利と2歳の頃はそれなりに走っていたのですが、3歳になると全く走らなくなったため障害へと転向します。

すると2戦目で勝利、5歳になると中山グランドジャンプをコースレコードで勝利し、初のG1タイトルを手にします。
更に小倉サマージャンプ、暮れの中山大障害も勝利して障害競走馬の頂点に立ちました。

しかし翌年になると後に障害競走馬の絶対王者として君臨するオジュウチョウサンに先着を許し続ける事となり、2018年の阪神スプリングステークス、阪神ジャンプステークスと久々に重賞レースを勝利するものの、それ以降は中山大障害の落馬を最後に出走する事なく登録抹消となり、現在は馬事公苑で乗馬となり、第二の人生を過ごしています。

ソダシ

ソダシ(引用元:JRA-VAN World)

白毛の馬として史上初めてG1レースを制した競走馬としてあまりにも有名なソダシもクロフネ産駒の1頭です。

2歳の時に札幌2歳ステークスとアルテミスステークスを制し、さらには2歳牝馬限定G1レースである阪神ジュベナイルフィリーズにも勝利、3歳になると桜花賞も制して牝馬3冠達成かと思われましたが、オークスでは距離が長すぎたため惨敗、しかし札幌記念は古馬相手に横綱相撲といっても良い走りで完勝します。

ところが秋華賞は顔をぶつけるというアクシデントによって本来の力を発揮できませんでした。
その後突如ダートへと転向、初めは思うような結果を出せませんでしたが、年明けのフェブラリーステークスでは3着と好走します。

以降はダート路線を諦めて芝コースへと戻ると、復帰初戦のヴィクトリアマイルを制覇、2023年もマイル戦線の筆頭牝馬として期待を寄せられています。

母父としての産駒

ノームコア(引用元:JRA-VAN)

母父としては、2015年にノームコアがヴィクトリアマイルと香港カップを制するなどG1レースを含めて重賞5勝を挙げたほか、2016年にはクロノジェネシスが秋華賞、宝塚記念連覇、有馬記念とG1レースを4勝、2017年にはレイパパレ、2019年にはスタニングローズと、続々とG1レースに勝利する名馬が誕生しています。

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まとめ

クロフネは外国産馬であり、出走できるG1レースが限られていましたが、日本ダービーが外国産馬にも開放されたことを受けて、初年度の覇者になって日本の競馬ファンを驚かせたいという思いから、浦賀に来航した黒船にあやかってクロフネという名前が付けられました。

2歳では順調に勝ち上がり、重賞レースであるラジオたんば賞3歳ステークスに挑むもアグネスタキオンとジャングルポケットに阻まれて敗北を喫します。

3歳はダービー制覇に向けてのスケジュールが組まれ、その前哨戦として「NHKマイルカップ」に出走、このレースを最後方からのレースで完勝すると、いよいよ日本ダービー本番となりますが、ここではまたもジャングルポケットに先着を許してしまいます。

その後天皇賞秋への出走を計画していましたが、出走枠が埋まってしまったためダートへ転向、すると武蔵野ステークス、ジャパンカップダートを従来のタイムを1秒以上縮めるレコード勝ちで圧勝、ファンを震撼させましたが、その後屈腱炎を発症、治療には長い期間が必要ということもあり、クロフネはわずか2年の競走人生で引退することとなりました。

しかしその後は種牡馬として大活躍、史上初の白毛G1馬ソダシをはじめ、数々の重賞勝利馬を輩出、一大勢力を築くに至っています。
クロフネ産駒は、以下のような特徴を持っているので、覚えておくとよいでしょう。

クロフネ産駒の特徴
・芝・ダートともに活躍する馬を輩出
・距離はマイルまでの距離で特に強い
・休み明けはあまり走らず、2戦目・3戦目あたりから調子が出てくる