競走馬の名前は何でもあり?意外と厳しい馬名のルールや基準、審査を紹介

競走馬の名前は何でもあり?意外と厳しい馬名のルールや基準、審査を紹介

競馬に長く親しんでいると面白い競走馬の名前を見かけることも多いです。
競走馬は一年で7,000頭近くが誕生し、すべての競走馬に名前が付けられます。

ディープインパクトやオルフェーヴルといったかっこいい名前もあれば、ネコパンチやオマワリサンのような変わった名前の馬も少なくありません。

実はルールさえ満たしていれば競走馬の名前はなんでも付けられます。
そのため、面白い名前を付けられる馬も少なくありません。
では、競走馬の馬名に関するルールにはどういったものがあるのでしょうか。

当記事では競走馬の名前に関するルールや基準を紹介したうえで、実在した競走馬で一風変わった面白い名前の馬を紹介していきます。

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競走馬の名前には文字数制限がある!

競走馬の名前には文字数制限がある!

競走馬の名前には文字制限があります。
また、名前はアルファベット表記しなくてはならず、その文字数も決まっているのです。
最初に文字数制限について解説します。

名前は日本語で2文字から9文字の範囲

競走馬の名前は日本語表記で2文字から9文字まで指定できます。
2文字の馬は絶対数こそ少ないですが、牝馬二冠を手にしたベガや京阪杯を連破したネロ、UAEダービー勝ち馬のラニなどがいるので有名な馬は意外と多いです。

1文字の馬は戦前に「ヤ」という馬がいました。名前の由来は「矢」からきています。
その後は1文字の馬は現れず、2002年に2文字から9文字と規定されたため今後は1文字の馬がデビューすることはありません。

文字数の上限は9文字と決まっており、10文字以上の馬名登録はできません。
ただし、これは日本に限った話です。

例えばオーストラリアのテイクオーバーターゲットや香港のロマンチックウォリアーは10文字以上ですが問題ありません。
なぜなら、外国馬の馬名は尊重するというルールがあるからです。

外国馬が日本のレースに出走した際、その外国馬の単勝を購入すると馬券に10文字以上の馬名が印字されますが全く問題ないのです。

アルファベットは18字文字以下

競走馬の名前は日本語で9文字ですが、同時にアルファベットで18文字以下でないといけません。
仮に日本語で9文字以内でもアルファベットで19文字以上になる場合は無理やり調整するケースもあります。

例えば1997年の菊花賞を制したマチカネフクキタルはアルファベット表記にすると「Machikane Fukukitaru」になります。

スペースも1文字に換算するので合計20文字になるのですが、スペースをカットしてなおかつ冠名「Machikane」を「Matikane」に変えることで馬名登録しました。

使用できない名前もある!主な基準7選

使用できない名前もある!主な基準7選

先ほどは名前の文字数に関してのルールを紹介しました。
しかし、馬名登録にはそれ以外にも基準があります。

掘り起こせば細かいところまで出てきますが、当項目ではとくに有名な7つの基準について紹介します。

G1勝ち馬の名前は使用できない

ディープインパクトやアーモンドアイなど、すでにG1レースを制した競走馬の名前を付けることはできません。
なぜなら、同名の馬が何頭もG1レースを制したらややこしくなるです。

ちなみに中山グランドジャンプや中山大障害といったJ・G1競走や地方競馬のJpn1勝ち馬の名前も使用不可能です。
ただし、ディープボンドやミホシンザンのように、過去のG1馬の名前を一部付け足してオリジナルの馬名にすることは可能です。

紛らわしい名前

有名馬と名前が類似している馬は紛らわしい可能性があるため却下される場合があります。
過去にはチョウカイテイオーやモルフェーヴルなどが審査を受けました。

前者は二冠馬トウカイテイオー、後者は三冠馬オルフェーヴルと名前が似ていることから、審査は通っていません。
発音が似ていると実況中継でややこしくなるため、却下されやすいです。

ちなみにモルフェーヴルという名称で審査を受けた馬は最終的に「モルフェオルフェ」という馬名で登録されました。
中央競馬では3勝クラスを制してオープン入りを果たし、2022年6月の段階では地方に移籍してまだまだ現役を全うしています。

父や母の名前

競走馬の両親の名前は登録できません。
両親と同名だったら予想する上でややこしくなるからです。

また、父母が現役時代にG1タイトルを手にしていなくても、すでに功績を残している種牡馬や繁殖牝馬だった場合は同名登録はできません。
なお、この「すでに功績を残している」基準は明確にされていません。

現役馬と同じ名前

現役で活躍している馬と同じ名前で登録することはできません。
なぜなら、同じレースに同名の馬がいると実況中継や予想する際ややこしくなるため当然の措置です。

しかしながら、大した活躍もなく登録抹消した過去の馬名は一定期間を過ぎると付けることができます。
アーモンドアイといえばG1レースを9つ手にした牝馬のイメージを誰もが持つでしょう。

しかし、実はアーモンドアイという馬は1980年代に存在しており、そちらは1勝もあげることなく引退しています。
もしも過去のアーモンドアイがG1レースを制していたら、現在だれもがイメージするアーモンドアイという馬名は使用できず、別の馬名になっていたのです。

倫理に反する名前も使用不可

倫理に反する名前は付けることができません。
例えば、公序良俗に反する馬名や侮辱的とみなされる馬名です。
競馬はテレビやラジオで中継されるため、メディアで放送できないような言葉は使用できないのです。

広告目的の名前

競走馬のオーナーは法人やその代表であることが多いです。
そのため、競走馬名を通して自社の宣伝を行いたくなります。

しかしながら、広告目的の名前を付けることはできません。
過去には高須クリニックの院長、高須克弥氏が「イエスタカス」という馬名登録を行いましたが却下されました。
なぜなら、宣伝目的と判断されたからです。

確かに、CMのキャッチコピーとしても有名なので宣伝と判断されてもおかしくありません。
しかしながら、略称や世の中に認知度がない名称は採用されるケースもあります。

例えば、北島三郎さんが所有しているキタサンブラックやDr.コパさんの所有馬コパノリッキーは略称で登録されました。
また、元ライブドアのホリエモンこと堀江貴文さんも所有馬にホリエモンとつけて審査を通過しています。

ホリエモンの場合は堀江貴文さんがメディアで大々的に取り上げられる前で知名度もそこまでないと判断されたため、登録されたようです。

競馬用語が混じっている名前

意外かもしれませんが、競馬用語が含まれている名前は登録できません。
競馬用語というのは競馬でよく使われる単語です。

例えばレースの名前や馬の品種、毛色や番号、ヘルメットの色などが該当します。
なぜ競馬用語が禁止されているかというと、実況で紛らわしくなるからです。

過去には珍名馬の名付け親として有名な小田切有一氏が「ニバンテ」という馬名を申請しましたが、上記の理由のため却下されました。

ユニークな名前の競走馬も多い!面白い競走馬名10選

ユニークな名前の競走馬も多い!面白い競走馬名10選

競走馬の名前にはルールがいくつかありますが、基準に引っ掛からなければ自由に名づけることができます。

そして、競走馬名にはユニークなものもたくさん存在します。
ここからは、数ある競走馬名の中からユニークなものを紹介します。

オマワリサン

オマワリサンは2008年に生まれた馬で、現役時代は2勝クラスを制しました。
名前に反して逃げ馬で、現役時代は逃げて勝利しています。

本来のお巡りさんは捕まえる立場にあるので、実況が「逃げ切ってゴールイン!」と言った際はなんともおかしな気持ちになりました。

モチ

2006年の秋にデビューした「モチ」モ珍名馬として有名です。
名前の由来は食べ物の「餅」で、主な勝ち鞍は若駒ステークスです。
オマワリサンと同じく逃げの競馬を得意とし、逃げ粘りで3勝クラスまで昇り詰めました。

逃げ粘っている際、「モチが粘っている!」と実況中継されたときは全国の競馬ファンが思わずクスリとしたものです。
名前通り、粘りのある走りを得意としていたのです。

ホリエモン

ホリエモン(引用元:四国新聞社)

ホリエモンは2004年にデビューした馬です。
馬名を見たら一目瞭然ですが、元ライブドア社長の堀江貴文さんの所有馬です。
広告目的に引っ掛かりそうですが、ホリエモンは無事に審査を通って馬名登録されました。

しかしながら、中央競馬における勝利はなく、早い段階で地方競馬に移籍しました。
地方では高知競馬場をメインに使われ、最終的には14勝を挙げています。

ネコパンチ

珍名馬としてもとくに有名なネコパンチ。
なぜ、有名かというと歴とした重賞馬だからです。
ネコパンチが手にした重賞は2012年の日経賞です。

この年の日経賞はウインバリアシオンやルーラーシップといった競合が集まり、ネコパンチは12番人気でした。
ところが、ノーマークからの逃げが見事にはまって最終的には勝利をつかんだのです。

単勝オッズ167.1倍、3連単は4571.4倍となり、波乱の立会者となったのです。
ちなみにネコパンチに騎乗していた機種は穴党としてもおなじみ江田照男騎手でした。

オレハマッテルゼ

数ある珍名馬の中でも印象深いオレハマッテルゼはサンデーサイレンスの晩年の産駒です。
ひょうきんな名前ですが、ネコパンチ同様こちらも重賞馬…それどころかG1レースを制しています。

デビュー時こそ中距離レースにおける活躍が期待されましたが、次第に距離が短縮されて最終的には高松宮記念を制しました。

珍名馬のなかでは珍しいG1勝ち馬なのです。
引退後は種牡馬入りを果たしました。

産駒にはオーストラリアのG1オールエイジドステークスを制したハナズゴールやオーシャンステークスを制したキングハートがいます。
ちなみに、オレニホレルナヨという馬もいますがこちらは父がサクラバクシンオーなのでオレハマッテルゼとは関係ありません。

リンゴアメ

リンゴアメ(引用元:JRA)

2020年にデビューしたリンゴアメは父がマツリダゴッホなので「マツリ=祭り」にあやかって命名されました。
おいしそうな名前ですが、現役時代は函館2歳ステークスを制している重賞馬です。

この函館2歳ステークスを最後、勝ち星を挙げることなく引退していたので一発屋のイメージはありますが、名前が印象深いので記憶に残っているファンも少なくありません。

キンタマーニ

2005年にデビューしたキンタマーニは下ネタ的な意味で本来なら登録却下されてもおかしくありません。
しかしながら、「インドネシア北部にある小さな村」が由来ということでなんと馬名登録されたのです。
中央競馬における勝利はありませんでしたが、船橋競馬場で4勝をあげ、地方で活躍していました。

ビックリシタナモー

ビックリシタナモーは2010年代後半に活躍した馬なので印象に残っている人も多いでしょう。
短距離ダートで5勝してオープン入りを果たしています。
当時デビューしたての藤田奈々子騎手が騎乗していたことも踏まえ、なにかと注目されていました。

スモモモモモモモモ

スモモモモモモモモは大井競馬でデビューした馬です。
オーナーは井上久光氏で、デビュー12戦目で初勝利をつかんでいます。

その名前のインパクトはフジテレビの朝の情報チャンネル「めざましテレビ」で取り上げられたほか、海外の競馬ファンにも注目されました。

とにかく噛みそうなネーミングは実況泣かせと言われていますが、実際に噛んだことはなく、実況のプロ意識の高さが感じられます。

ミタコトナイ

ミタコトナイ(引用元:ばんえい牧場十勝facebook)

ばんえいファンならだれもが知っているミタコトナイは帯広競馬所属のばん馬です。
重賞勝ちこそありませんが、2009年から2017年までの間に137戦出走して41勝しました。

引退後は種牡馬入りし、現在も産駒がばんえい競馬場で走っています。
ちなみにミタコトナイの産駒にミタコトアルという馬がいますが、明らかに父馬を連想させる馬がいます。

競走馬の名前は馬主で決まる?珍名に定評のある馬主の特徴

競走馬の名前は馬主で決まる?珍名に定評のある馬主の特徴

競走馬の名前を決めるのは馬主です。
競馬会にはさまざまな馬主がいますが、名前の由来にこだわるオーナーは少なくありません。
ここからは、競馬界でも有名なオーナーについて紹介していきます。

小田切有一オーナー

珍名馬の名付け親として有名なのは小田切有一氏です。
本業は食品貿易会社「エール株式会社」の代表取締役社長です。

競走馬名をおもしろおかしくすることにこだわっており、先ほど紹介したオマワリサンやモチ、オレハマッテルゼをはじめ、オークス馬ノアノハコブネを所有していました。

小田切氏の息子である小田切光氏も馬主資格を所持しており、2023年の新潟大賞典を制したカラテを所有しています。
小田切氏の影響はある意味競馬界で有名で、小田切氏の馬はオダギラーと呼ばれるほどです。

冠名にこだわるオーナー

競走馬には「メイショウ」や「サトノ」、「サクラ」に「ナリタ」など、特定の単語が複数の馬に使われることがあります。
これは冠名といって、特定のオーナーが自身の所有馬に必ずつけます。

冠名が付いてると競走馬名を通してだれもが所有者を判断できるため、分かりやすいです。
また、重賞やG1を制した馬の名前は半永久的に競馬史に刻まれるため、馬名を通して自身の栄光を残すこともできるのです。

かつては「サクラ」や「ナリタ」といった冠名馬が一世風靡していました。
現在は「ジャスティン」や「モズ」、「ミッキー」などの馬が活躍しています。

森中蕃オーナー

森中蕃氏は神戸市にある光証券株式会社の元代表取締役社長を務められていました。
冠名「シゲル」のオーナーとしても有名で、シゲルの名前が付けられた馬はシゲル軍団とも呼ばれています。
シゲル軍団の面白いところは、その年によってテーマを変えていることです。

例えば、2013年生まれの所有馬は「シゲルノコギリザメ」や「シゲルロウニンアジ」のように魚がテーマとなっていて、2016年は「シゲルピンクダイヤ」のように宝石名がつけられました。
ちなみに、シゲルピンクダイヤは桜花賞で2着に入線しています。

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まとめ

競走馬の名前は一見自由に付けられるように思います。
しかし、実際は細かなルールが存在し馬主はルールに基づいた馬名を決めています。

逆に言うと審査にさえ通ってしまえばどんな名前でも登録可能なのが馬名の面白いところです。
そのおかげでユニークな名前の馬がターフを駆け抜けるようになりました。

今後も面白い名前の馬が出てくるでしょう。
馬名を通して、競馬を楽しみましょう。