JRAの歴代CMと使用されていた曲について解説!
2023年時点、中央競馬のレースは毎週日曜日に「競馬BEAT」という番組で中継され、テレビがあれば誰でもレースを(15時からのレースに限定されますが)視聴することができます。
そして、放送中に流れるコマーシャルの中にはJRA(日本中央競馬会)が作成したものが放送されています。
現在のようなJRAのコマーシャルがスタートしたのは1989年とされていますが、これまで様々なコマーシャルが放送されてきました。
本記事ではJRAが作成して放送した歴代CMと、CM中で使用された楽曲について解説します。
JRAのコマーシャルは大きく二分されている
JRAのコマーシャルは実は大きく二分されていることに気付いている人はいるでしょうか。
ひとつはJRAのコマーシャルとして多くの人がイメージするもので、コマーシャル放送時点で高い好感度を保有する俳優さんや女優さんを起用し、一般的にギャンブルの側面が強い競馬を払拭して、競馬や競馬場は楽しところだというのを全面的にアピールしているコマーシャルです。
近年は、イメージキャラクターとして起用されたタレントさんたちが競馬場を訪れて満喫しているといった内容になっているものが多くなっています。
もうひとつは競馬そのものに注目したコマーシャルで、競馬の裏側をピックアップして、競馬というのはとても多くの人が関わっていて、多くの人の思いを乗せて競走馬はレースに臨んでいるといった部分を紹介、競馬というのは奥深いものだということを伝えることを目的としています。
2023年のコマーシャルではG1レースに出走する競走馬に関わった人や、その馬に勇気をもらった人たちとのつながりを描いたアニメ調のコマーシャルになっていて、競馬というのは多くの人たちの心を動かす力を持った競技であることが伝わる内容になっています。
2023年JRAコマーシャルイメージキャラクターと使用楽曲について
(引用元:JRA)
2023年JRAの年間イメージキャラクターとして起用されたのは長澤まさみさんと、三上愛さんで、キャッチコピーは「HERO IS COMMING」で、このキャッチコピーは2022年からの継続採用です。
それに加えて、佐々木蔵之介さんが新たにイメージキャラクターとして加わり、3人体制で現在はコマーシャルが放送されています。
使用されている楽曲は安室奈美恵さんの「Hero」で、コマーシャルのキャッチコピーと見事にマッチした選曲と言えるでしょう。
もうひとつのコマーシャルは先ほど紹介した、競走馬とそれに関わる人たちとの絆が描かれた全編アニメーションのコマーシャルで、キャッチコピーは「今日、私の物語が走ります」です。
楽曲はAimerさんの「crossovers」が使用され、Aimerさんの歌声によって物語はより一層感動的なものとなっています。
これまでのJRAが起用した俳優さんを一覧にまとめました
冒頭にも触れた通り、JRAがテレビコマーシャルを放送したのは1989年からです。
1989年以降、これまでどのような俳優さんがイメージキャラクターとして起用されたのか、一覧にまとめました。
年 | 起用されたタレント |
1989年 | 小林薫さん |
1990~1991年 | 柳葉敏郎さん・賀来千香子さん |
1992~1993年 | 高倉健さん他 |
1994~1995年 | 真田広之さん・時任三郎さん・中井貴一さん |
1996~1997年 | 本木雅弘さん・鶴田真由さん |
1998~1998年 | 木村拓哉さん |
2000年 | 緒形拳さん・松嶋菜々子さん |
2002年 | 小林薫さん・緒形拳さん・妻夫木聡さん |
2002年~2003年 | 明石家さんまさん他 |
2005年~2006年 | 中居正広さん他 |
2007年 | 織田裕二さん |
2008年~2010年 | 佐藤浩市さん・大泉洋さん小池徹平さん・蒼井優さん他 |
2011年 | 桐谷健太さん・吉高由里子さん・佐藤健さん他 |
2015年~2016年 | 瑛太さん・有村架純さん・笑福亭鶴瓶さん他 |
2017年~2021年 | 松坂桃李さん・柳楽優弥さん・高畑充希さん 土屋太鳳さん・中川大志さん・葵わかなさん他 |
いずれも一般の人から良いイメージを持たれているタレントさんばかりが起用されていることが分かるのではないでしょうか。
近年は比較的若い人たちから人気が高いタレントさんを多く起用しているイメージがありますが、2023年は幅広い年代に支持をされているタレントさんが起用されているなといった印象です。
JRAのCMではどんな曲が使用されていた?
起用されているタレントさんと共にコマーシャルに使用されている楽曲にも注目してみました。
コマーシャル曲の威力というのはとても強く、キャッチ―な曲は長年私たちの記憶に残るものです。
例えば「タケモトピアノ」の楽曲はもう何十年も同じものが使われていますが、このコマーシャル曲は幅広い年代の人が知っていることでしょう。
年代順ではありませんが、これまでJRAのCMで使用された楽曲を一覧にしました。
曲名 | アーティスト |
茜空 | レミオロメン |
雨が空から離れたら | 熊木杏里 |
いこう | いきものがかり |
いつもそばに | 倉持明日香 |
Woh woh | 小田和正 |
影踏み | 一青窈 |
風の街 | 小田和正 |
かなた | 小田和正 |
君の背中にはいつも愛がある | MISIA |
19の頃 | 小田和正 |
3カウント | ゆず |
だって夏じゃない | TUBE |
ハナミズキ | 一青窈 |
Hero | 安室奈美恵 |
HOLIDAYS | 木村カエラ |
マイステージ | いきものがかり |
街角 -on the corner- | ゴスペラーズ |
LOVE, HOLIDAY. | TOKIO |
小田和正さんの名前がとても多いです。
往年の競馬ファンにとっては、JRAのコマーシャルといえば小田和正さんというイメージが強いのではないでしょうか。
2011年より大きく路線変更
ここまでの解説を見てもらえば分かるように、JRAのコマーシャルは好感度の高い俳優さんを起用し、競馬に対してライトなイメージを植え付けようという意図で放送されました。
ライトなイメージを世間一般に植え付ける事ができれば、新しいお客さんを獲得できるからです。
競艇は正にその路線で大成功を収め、2022年にはついにこれまでの競艇の歴史の中で最高の売り上げを記録しました。
ところがJRAは2011年、G1レースの際に放送するコマーシャルを、それまでのライトなイメージのコマーシャルから大きく路線変更します。
以降2013年まで同じような路線で放送されたコマーシャルは、コアな競馬ファンからとても高い支持を集めていて、「JRAの本気」と呼ばれています。
年代別の起用タレントの表を見てもらえば分かる通り、2011年を最後にタレント起用が一旦中断されました。
実は競馬の売り上げは1997年をピークにそれ以降減少傾向にあり、2011年は全盛期の55パーセントにまで落ち込んでしまっています。
これは想定の域を出ませんが、この時期の大きな路線変更は、宣伝費を削減するという意図があったのではないでしょうか。
そう考えなければ、売り上げの落ち込みぶりと、CMの路線変更の時期がピッタリ重なるのは偶然にしては出来すぎているような気がします。
2011年名馬中の名馬をピックアップ!
2011年度のG1レース時のコマーシャルの何が変わったのかというと、それまでコマーシャルでは脇役に過ぎなかった競走馬にスポットを当てたという点です。
というよりも競走馬しかコマーシャルに出ないという変貌ぶりでした。
楽曲はこの時のために書き下ろされた新曲ではなく、T-REXの名曲中の名曲である「20th Century boy」を採用、モノクロメインの映像に非常にマッチしていました。
コマーシャルは各G1レース毎に新規のものを放送し、過去の同一レースで最も印象に残る走りを見せた名馬たちにスポットを当てたものとなっています。
使用する楽曲にちなんで、登場する名馬たちは全て20世紀、特に90年代に大活躍した馬たちが採用されました。
また、各CMで使われた各馬のキャッチコピーも非常に好評で、各馬の高い能力や、起こした奇跡を一言で見事に表現しています。
レース名 | 馬名と優勝した年 | キャッチコピー |
桜花賞(テレビ未放映) | ベガ(1993年) | ハンデは、強くなるためにある |
皐月賞 | ミホノブルボン(1992年) | 常識は、敵だ |
天皇賞・春 | メジロマックイーン(1991年) | 絶対の強さは、時に人を退屈させる |
東京優駿 | トウカイテイオー(1991年) | 天才はいる。悔しいが |
安田記念 | タイキシャトル(1998年) | 可能性は人を熱くする |
宝塚記念 | サイレンススズカ(1998年) | 速さは、自由か孤独か |
菊花賞 | ナリタブライアン(1994年) | 群れに答えなどない |
天皇賞・秋 | スペシャルウィーク(1999年) | 本当の敵は、諦めだ |
ジャパンカップ | エルコンドルパサー(1998年) | 僕らは、1人では強くなれない |
有馬記念 | オグリキャップ(1990年) | 神はいる。そう思った。 |
2012年The WINNER
2012年は日本近代競馬150周年記念の年でした。
昨年のCMがとても好評だったため、今回は「The WINNER 」というテーマで、各G1レースに勝利した競走馬をより深く掘り下げたものとなっています。
レース名 | 競走馬名と優勝した年 | キャッチコピー |
高松宮記念 | キングヘイロー(2000年) | 緑のメンコ、不屈の魂 |
桜花賞 | メジロラモーヌ(1986年) | 魔性の青鹿毛 |
皐月賞 | アグネンタキオン(2001年) | 超光速の粒子 |
天皇賞・春 | ライスシャワー(1993年) | ヒールか、ヒーローか、悪夢か、奇跡か |
優駿牝馬 | エアグルーヴ(1996年) | 額の流星は宿命か。オークス、親子制覇 |
東京優駿 | ウイニングチケット(1993年) | 熱狂の2分25秒、直線を制した |
安田記念 | ニホンピロウイナー(1985年) | 何者も寄せ付けない、「マイルの皇帝」 |
宝塚記念 | グラスワンダー(1999年) | 一瞬の判断で未来を変えた、未知なる栗毛 |
スプリンターズステークス | サクラバクシンオー(1994年) | 最後に勝つ者が、勝者だ |
菊花賞 | ミスターシービー(1983年) | そうか、「タブーは人が作るものに過ぎない」 |
天皇賞・秋 | タマモクロス(1988年) | 宿敵が強さをくれる |
マイルチャンピオンシップ | サッカーボーイ(1988年) | 見るものすべての心をかき乱す、その末脚を人は愛した |
ジャパンカップ | ホーリックス(1989年) | ワールドレコード、2分22秒2という事件 |
有馬記念 | テンポイント(1977年) | 戯れにも見えた、死闘にも見えた |
2013年THE LEGEND
2012年のCMもコアな競馬ファンにとても好評だったので、引き続き同じ路線のコマーシャルとなりましたが、その内容はよりスタイリッシュなものとなっています。
また楽曲もコマーシャル毎に変わっているのもこの年のコマーシャルの大きな特徴です。
レース名 | 競走馬名と優勝した年 | キャッチコピー |
フェブラリーステークス | メイセイオペラ(1999年) | 時代は外から変わっていく。「砂の王者へ」 |
桜花賞 | テスコガビー81975年) | 美しさは、いつも他を置き去りにする「桜の女王へ」 |
天皇賞・春 | ディープインパクト(2006年) | 競馬は時々、競馬を超える「全世代の頂点へ」 |
東京優駿 | ウォッカ(2007年) | 誰もいかない道を行け、茨の中に答えがある「一生に一度の栄光へ」 |
宝塚記念 | ビワハヤヒデ(1994年) | 真の強さは、スリルすら拒む。「灼熱のグランプリへ。」 |
スプリンターズステークス | フラワーパーク(1999年) | 勝者、フラワーパーク。勝者は必ず、敗者を作る。「電撃の短距離戦へ。」 |
菊花賞 | スーパークリーク(1998年) | 本当の出会いなど、一生に何度あるだろう?「黄金の道へ。」 |
天皇賞・秋 | バブルガムフェロー(1996年) | わずか3歳で天皇賞を勝つなんて。「爆発が世代を超える。」 |
ジャパンカップ | シンボリルドルフ(1985年) | その秋、日本は世界に届いていた。「全世界を席巻せよ。」 |
有馬記念 | テイエムオペラオー(2000年) | その戦いに、人は夢を見る。「さぁ、夢を見よう。」 |
再びタレントさんを全面に押し出した路線に
2013年までのコマーシャルは長年競馬に親しんでいたファンにはとても評判が良かったのですが、その一方で新規のファンを獲得することができませんでした。
また、競馬の売り上げが回復の兆しを見せていたこともあるのかもしれませんが、2014年にはイメージキャラクターに竹野内豊さんを起用し、各G1レースの名勝負にスポットを当てるという、これまでのタレントを起用したコマーシャルと、競走馬にフォーカスを当てた2011年からのコマーシャルとのハイブリッド版といった内容になっていましたが、残念ながらこの年のコマーシャルはどっちつかずの内容で中途半端なものに終わってしまったからか、ファンからの評判はあまりよくありませんでした。
そして2015年以降は再びタレントさんを全面に押し出した、ライト層に注目してもらえるようなコマーシャル路線に戻っています。
あまり知られていないがとても考えさせられる競馬のCMを紹介
2011年~2013年にかけてのコマーシャルは、古い競馬ファンだけではなく、新規競馬ファンにもかなり知られている有名なコマーシャルですが、それ以外にもタレントさんを起用したものとは全く異なるテイストのコマーシャルがいくつか放送されています。
リンク先を添付した上記のコマーシャルは「誕生」「デビュー」「G1レース」「引退」という4部作構成になっているのですが、1頭の競走馬には沢山の人が関わっていること、そして競走馬はレースの主役である前に生き物であるということを痛感するコマーシャルです。
私たち競馬ファンはこのコマーシャルのようなG1レースに出走する競走馬にばかり注目してしまいがちですが、そのような競走馬はほんの一握りで、大部分の競走馬はG1レースに出ることはおろか、レースで1勝もできないまま引退していくことになりますが、そんな競走馬もG1ホースも等しく同じ生き物です。
そして新馬戦を迎えるまでに様々なトレーニングを積み重ねていて、多くの人たちの思いを乗せてレースに出走しています。
そのことを理解してレースを観戦すると、今までとは全く異なる視点でレースを楽しめるのではないでしょうか。
競馬ファンなら誰もが描いたであろう「夢の第11レース」
もうひとつあまり知られていないですが、競馬ファンならば胸を熱くさせること間違いなしのコマーシャルを紹介します。
そのコマーシャルとは、「夢の第11レース」といったテーマで制作されていて、単刀直入に言えば「時代を超えて真の最強競走馬を決めるレース」を実現したらどうなるかという内容になっています。
選ばれた競走馬と馬番を表にまとめました。
馬番 | 競走馬名 |
1 | サイレンススズカ |
2 | メジロマックイーン |
3 | ウォッカ |
4 | トウカイテイオー |
5 | スペシャルウィーク |
6 | テイエムオペラオー |
7 | アグネスタキオン |
8 | オグリキャップ |
9 | エルコンドルパサー |
10 | シンボリルドルフ |
11 | ナリタブライアン |
12 | キングカメハメハ |
13 | ミスターシービー |
14 | ディープインパクト |
15 | エアグルーヴ |
16 | ブエナビスタ |
17 | ダイワスカーレット |
18 | オルフェーヴル |
どの馬も伝説級の活躍をしている名馬たちばかりですが、2023年に同じようなコマーシャルをするのであれば、多少顔ぶれは入れ替わるような気もします。
G1レース7勝のキタサンブラック、牝馬三冠とジャパンカップ連覇を果たしたジェンティルドンナ、G1レース9勝を達成したアーモンドアイなどはこの中に加わるような活躍をしています。
まとめ
ここまでJRAが放送したコマーシャルについて解説しました。
JRAのコマーシャルには主に新規ファンを獲得することが目的のものと、競馬という競技にフォーカスしたものとに大きく分かれます。
新規ファン獲得を目的としたコマーシャルですが、イメージキャラクターとしてその時点で好感度が高いタレントさんを起用し、英馬を楽しんでいるといった内容のものが多いです。
もうひとつ、競馬という競技にフォーカスしたものは、毎回工夫を凝らしたものとなっており、コアな競馬ファンにはこちらのほうが表かは高いです。
2011年から2013年にかけては、新規ファンを獲得することを目的としたコマーシャルをいったん中止し、競走馬にフォーカスした内容のものを放送しました。
このコマーシャルは、往年の名馬たちが登場することや映像自体がとても凝った作りになっているため、コアな競馬ファンからは今でも非常に評価が高いです。
また、毎年JRAのコマーシャルでは著名なアーティストが楽曲を提供しており、それらの楽曲はコマーシャルを更に素晴らしいものにしてくれています。
これからも私たちの胸を熱くさせるようなコマーシャルを放送してくれることを期待しましょう。
ウマ娘プリティーダービーの大ヒットによって競走馬そのものに注目するファンが増えているので、2011年から放送したような、競走馬に注目したコマーシャルを復活させるのも良いのではないかというのが個人的な意見です。