地方競馬のクラス分けとは?格付け表を使って力関係を一挙解説!
競馬にはクラス分けが存在します。
クラス分けというのはレースごとにクラスを導入することで、実力の近い馬同士でレースを行う仕組みです。
もしもクラス分けが存在しなければ、ディープインパクトクラスのG1馬とハルウララレベルの馬が毎回レースを行い、どの馬が勝つのか明白になります。
クラスの存在は能力の近い馬同士で競わせることで、すべての馬に勝つチャンスを与える大事な仕組みなのです。
ところで、日本の競馬は大きく分けて「中央競馬」と「地方競馬」の2種類が存在します。
地方競馬の出馬表には中央競馬では見ることがない「A,B,C」や「一、二、三」などの表記がされています。
中央競馬しか触れていない人にとってはなんのことかさっぱり分かりませんね。
今回は、地方競馬におけるクラス分けや地方競馬のクラス分けにおけるルールについて解説していきます。
大前提として地方競馬のクラス分けは統一されていない
地方競馬は2023年3月の時点で全国に15箇所存在しますが、すべての地方競馬のクラス分けは統一されていません。
大井競馬場や園田競馬場、名古屋競馬場など、競馬場ごとに独自のクラス分けルールが導入されているのです。
これが、地方競馬のクラス分けをややこしくしている要因なのですが、どうして競馬場ごとにルールが異なるかというと、運営方式が違うからです。
中央競馬の場合は主催がJRA(中央競馬界)なので、東京でも京都でも札幌でもクラス分けのルールは統一されています。
しかし、地方競馬は各地方自治体が運営しているので、クラス分けのルールが異なっているのです。
もっとも、おおまかなルールや表記の見方は統一されています。
そのため、細かいルールを知らなくてもクラス分けの見方を理解できれば地方競馬を楽しむことができますよ。
地方競馬は3つの表記でクラス分けをしている
地方競馬のクラス分けは基本的には3つの表記を使用しています。
・数字
・漢字とかたかな、イロハ
これら3つを組み合わせることでレースのクラスを表しているのです。
クラス分けで用いられる表記について説明していきます。
クラス分けの基本はアルファベットのA・B・C・D
クラス分けでもっとも重要なのがアルファベットの「A・B・C・D」です。
「A>B>C>D」の順番でレースの格が上がります。
基本的には最初のレースほどCで、後半のレースになるとAやBクラスのレースも開催されます。
アルファベットはレース名の一番最初、もしくは冠名の後ろにつくことが多く、分かりやすいです。
数字を用いて細かくクラス分けしている
地方競馬のレースはアルファベットのあとに数字を用いることで、より細かくクラス分けを行っています。
そして、数字が小さいほどレースレベルは高いです。
「B1・B2・B3」
「C1・C2・C3」
地方競馬のレースはアルファベットと数字を合わせてこのような表記をします。
この場合は「A1>A2>A3」の順にレースの格が高いです。
また、A3とB1の場合はアルファベットを優先にクラス分けするのでA3のほうが格が高くなります。
漢数字やカタカナ、イロハでさらにクラス分けすることもある
地方競馬によっては漢数字やカタカナ、イロハを使ってさらに細分化しています。
この3つの表記は「組」を表しています。
地方競馬の競走馬も賞金に応じてクラス分けされていますが、中央所属馬と違って地方馬はクラスごとに設けられたグループに所属します。
例えば、A1というクラスにも一組や二組など、学校のクラスのように所属する場所があり、同じクラス同士の馬とレースを行う仕組みになっています。
表記と格付けは以下のようになります。
・カタカナの場合は「ア>イ>ウ>エ」
・イロハの場合は「イ>ロ>ハ>ニ」
これらもアルファベットと数字のあとに表記されているので、覚えてしまえば簡単です。
例えば、「C2-二」という表記はC2クラスの二組に所属している馬がレースを行うことを意味していますよ。
中央競馬とは違う!地方競馬独自のクラス分けルール
地方競馬のクラス分けは中央競馬には見られない独自のクラス分けルールが存在しています。
しかも、各地方競馬場ごとにルールが異なるため、覚えるのに一苦労するのも無理はありません。
ここでは、地方競馬のクラス分けでも最低限覚えておきたいポイントだけをまとめました。
同じクラスでも実力は競馬場ごとに違う
地方競馬のクラスは、例え同じ表記がされていても実力に差があります。
例えば、地方競馬の中で南関競馬所属馬はレベルが高いといわれています。
対して、高知競馬場所属馬は地方競馬のなかでも能力の低い馬ばかり集まる競馬場です。
この2つの競馬場で「C-2」というレースがあったら一見同じレベルに感じますが、実際は南関の「C-2」のほうがはるかにレベルが高いです。
むしろ、高知の「B3」と南関の「C1」を比較しても、後者のほうがメンバーレベルが高いことが多いです。
クラス分けの表記はあくまでも同競馬場内でのみ通用すると思ってください。
降級制度が現存している
地方競馬では降級制度が存在します。
降級制度とは、ある一定の条件に当てはまった馬が上のクラスから下のクラスに降級することで、かつて上のクラスで走っていた馬とこれから上のクラスに挑む馬が戦う仕組みです。
中央競馬でも2019年まで導入されていて、降級制度を想定した馬券予想が行われていました。
しかし、降級制度はもともと降級制度は馬の頭数が乏しかった時代に、1頭の馬にできるだけ長くレースに出走してもらえるよう設けられた制度です。
現在は馬の頭数も増えたため、中央競馬では廃止されたのです。
ところが、地方競馬は未だに馬の数が多くありません。
競馬場によっては毎週連闘しているケースもあるほどです。
そのため、地方においては降級制度は現存しているのです。
2歳馬は組分けしないケースが多い
地方競馬ではデビューしたての2歳馬は組分けしないことが多いです。
なぜなら、組分けするほど頭数が多くないからです。
それまでの賞金額に応じてざっくりと馬の強弱を分けたうえでレースを行うケースが多いですよ。
代表的な競馬場のクラス分けと独自ルールを紹介
地方競馬のクラス分けは競馬場ごとに変わります。
一見ややこしく感じますが、慣れてしまえば難しくありません。
競馬場ごとに独自の表記をすることもあるので、興味のある競馬場のクラス分けだけ覚えてしまうのもひとつの手です。
ここからは、全国の地方競馬場の中でも知名度の高い競馬場のルールを紹介します。
南関東競馬場のクラス分け
大井競馬場のレース例(引用元:nankankeiba.com)
南関競馬場とは「大井」「船橋」「川崎」「浦和」の4つの競馬場を総称した名称です。
いずれの競馬場も南関東に所在することから南関競馬場と略されます。
全国にある地方競馬場の中でも強い馬が多数集まるのが特徴ですね。
また、数多くのビッグレースが開催されるため、地方競馬の中でも知名度は高いです。
南関競馬場は中央競馬でいう4大馬場(東京・中山・京都・阪神)のようなものだと認識してもらえばよいでしょう。
4つをまとめた南関競馬場はクラス分けのルールが統一されています。
最初に、地方競馬の中でも認知度とレベルの高い南関競馬場のルールについて紹介します。
クラス編成は8クラス
↑レベルが高い ↓レベルが低い |
A1 |
A2 | |
B1 | |
B2 | |
B3 | |
C1 | |
C2 | |
C3 | |
2,3歳の未格付馬 |
南関競馬場のクラス分けは全部で8クラス(未格付けを含めると9クラス)存在しています。
獲得賞金に応じてクラス編成が成され、上半期(1月から6月)と下半期(7月から12月)によって基準が変わります。
南関競馬は賞金を加算すれば昇級できる
南関競馬のクラス編成で重要なのは賞金とクラス編成の条件です。
中央競馬の場合は2着以内に入選した時に得られる収得賞金の合計額でクラスが決まります。
対して、南関競馬の場合はレースに入選した時に得られる本賞金の合計額でクラス編成が決まるのです。
本賞金とは1着から5着までに入選した馬に与えられる賞金のことです。
例えば、ある中央所属馬が中央のレースで常に3着入選していた場合は収得賞金がゼロなので昇級することはありません。
しかし、南関競馬所属馬が南関のレースで3着入選を繰り返していたら、本賞金は加算されるのでいずれは昇級する仕組みとなっているのです。
なお、ときどき中央所属馬が南関に移籍することがありますが、その際はそれまでに獲得した本賞金を計算したうえでどのクラスに所属するか決まります。
10歳以上の馬はエリート以外引退する
南関競馬では10歳以上の馬は基本的には所属できません。
唯一所属できるケースがA1に所属している場合です。
しかし、1年以内に本賞金を獲得できなかった場合、言い方を変えれば1年で1度も5着以内に入選できなかった場合は出走資格を失います。
南関競馬は若い競走馬に活躍の場を設けるため、年を重ねた馬は長く配属できない仕組みになっているのです。
門別競馬場のクラス分け
(引用元:ホッカイドウ競馬)
北海道の地方競馬は門別競馬場と帯広競馬場がありますが、帯広はばんばが主役のばんえい競馬のみ開催しています。
そのため、門別競馬場は北海道内で唯一サラブレッドの競走が行われる地方競馬場となります。
門別競馬場が所在する北海道の日高地方は競走馬の産地として有名です。
そのため、門別でデビューする地方馬は非常に多いです。
そんな門別競馬場にもほかでは見られないクラス分けルールが存在しているので解説していきます。
門別のクラス編成は12クラスある
門別競馬場のクラス分けは12クラスも存在します。
「B1・B2・B3・B4」
「C1・C2・C3・C4」
他の競馬場と比較しても、クラスが非常に細かく分かれているのです。
2歳馬もクラス分けが行われている
門別競馬場はほかの地方競馬と比較しても2歳馬のデビューが多いです。
おそらくは生産拠点の日高と門別競馬場が近いことから、デビュー戦で使いやすい競馬場だからだと思います。
2歳競走が多いため、門別競馬場では2歳馬もクラス分けを行っています。
ちなみに、2歳馬は下記のようにクラス分けされます。
これまでの獲得賞金に応じてどのクラスに所属するか変わりますよ。
園田競馬場のクラス分け
(引用元:園田・姫路競馬場)
園田競馬場は関西人にとっては馴染み深い競馬場です。
兵庫県の尼崎市に所在する園田競馬場は昔から変わらない雰囲気、そして大阪からも兵庫からもアクセスしやすい地理の理で毎日にぎわっています。
地元に愛されている園田競馬場でも独自のクラス分けが設けられているので紹介しますね。
ちなみに、園田競馬場は兵庫競馬組合という組織に所属しています。
同じ兵庫県内にある姫路競馬場も兵庫競馬組合に所属しているため、園田と姫路は全く同じルールが導入されていますよ。
クラス編成は7種類
↑レベルが高い ↓レベルが低い |
A1 |
A2 | |
B1 | |
B2 | |
C1 | |
C2 | |
C3 | |
2,3歳の未格付馬 |
園田競馬のクラス分けは7段階(未格付けを含めると8段階)に分かれています。
他の競馬場ではレースで獲得した賞金に応じてクラス分けされますが、園田競馬場の場合はポイント制という独自のルールを用いて編成されているのです。
ポイント制を導入している
園田競馬場のポイント制は、レースの着順ごとに得られるポイントのトータルでクラスが決まります。
◆4(3歳)歳以上馬ポイント表
ランク | ポイント | ポイント幅 | |
下限 | 上限 | ||
A1 | 760以上 | – | – |
A2 | 630 | 759 | 130 |
B1 | 500 | 629 | 130 |
B2 | 370 | 499 | 130 |
C1 | 240 | 369 | 130 |
C2 | 100 | 239 | 140 |
C# | 0 | 99 | 100 |
◆加算ポイント
1着 | 2着 | 3着 | 4着 | 5着 | |
重賞競走 | 100 | 34 | 18 | 10 | 8 |
一般競走 | 100 | 24 | 12 | 8 | 6 |
レースの着順ごとに得られるポイントの総数でクラスが決まり、ポイント合計が各クラスの上限を超えたら昇級します。
降級はクラス内で着順合計値が高い馬から下がる
園田競馬場でも降級制度が導入されていますが、降級は他の競馬場よりもシビアです。
2か月ごとに行われる格付け修正時に、同一クラスで近3戦の着順の合計が多い馬が降級します。
例えば、C1クラスで近3戦したAとBの2頭がいるとします。
A近3戦いずれも5着だった場合、着順合計は15になります。
そして、もう1頭は近3戦いずれも10着だった場合は着順合計が30になるため、格付け修正時に降級するのはBになります。
他の地方競馬と比較しても降級が適応される間隔が2か月と短く、昇級したと思ったらいつのまにか降級しているケースも少なくありませんよ。
高知競馬場のクラス分け
(引用元:KEIBA.GO.JP)
地方競馬最後の受け皿として知られる高知競馬場は中国四国地方で唯一の地方競馬場です。
かつて一世風靡したハルウララが活躍した舞台でもあります。
そんな高知競馬場のクラス分けは全地方競馬場の中でももっとも理解するのが難しいです。
なぜなら、上のクラスで走っていた馬がいつのまにか低クラスで競走している場合があるからです。
どうして高知ではこのような現象が起きているのか。
高知の不思議な仕組みについて解説します。
クラス編成は6段階
高知競馬のクラス編成は6段階に分けられています。
◆4歳(10月以降は3歳馬も含まれる)
レベル | クラス | 本賞金 |
↑レベルが高い ↓レベルが低い |
A級 | 1,000万1円以上 |
B級 | 600万1円~1,000万円 | |
C1級 | 400万1円~600万円 | |
C2級 | 280万1円~400万円 | |
C3級上 | 180万1円~280万円 | |
C3級下 | 0円~180万円 |
2,3歳馬は年齢ごとにレースが組まれますが、本賞金が100万円を超えた場合はクラスに含まれます。
高知は2年以上前の賞金は切り捨てて算出している
高知がほかの競馬場と比較しても変わっている最大の理由は、2年以上前の獲得賞金はすべて切り捨ててクラス分けしている点です。
2年以上前の実績はすべてカットされるので、極端な話2年以上前にG1レースを複数手にして近2年全く賞金をつかめていない馬はC3級下に編成されます。
2019年に高知に移籍したツクバアズマオーは元中央所属馬で中山金杯などの重賞レースをはじめ、中央競馬では7勝していました。
移籍当初は文句なしの実績でA級入りしましたが、移籍した2年間で手にした賞金は70万円だけでした。
2年後の編成時は中央の実績はすべてカットされ、高知で手にした70万円のみが対象となり、C3級(下)に降格したのです。
このように、中央で活躍した馬でも最低クラスに落ちる仕組みを導入しているのが高知競馬場です。
高知は地方競馬の受け皿として認知されているように、他の競馬場で勝てない馬が移籍するケースが多いです。
よそで活躍できない馬でも一花咲かせることを目的としているため、過去の実績を排除し、弱い馬でも勝てる環境を整えているのです。
【番外】中央競馬(JRA)のクラス分け
(引用元:JRA)
最後に、中央競馬のクラス分けを紹介します。
↑レベルが高い ↓レベルが低い |
オープン |
3勝クラス | |
2勝クラス | |
1勝クラス | |
新馬・未勝利 |
中央競馬は5つのクラス分けがされています。
オープン入りした馬はG1、G2、G3などの重賞に向かうことができます。
中央競馬は札幌から小倉まで、すべて共通しています。
中央に所属するすべての馬はG1の大舞台を制して世代のチャンピオンになるため、日々鍛錬を行っているのですね。
まとめ
今回は地方競馬のクラス分けについて紹介しました。
地方競馬は中央競馬と違って各自治体が運営しているので、中央競馬では見られない独自のルールも存在しています。
中央競馬しか触れていない人にとっては馴染みが薄いですし、覚えるのも大変に思うかもしれませんが慣れてしまえばそこまで難しいものではありません。
むしろ、クラス分けのルールを覚えてしまえばより一層地方競馬を楽しめます。
興味のある地方競馬があれば、ぜひクラス分けのルールを覚えてください。